誰しもがハマる「偽ミッキー」の魔力
いま、マレーシア首都クアラルンプールに来ている。本コラムを書きながら私が頬張っているのは、知る人ぞ知る有名な「偽ミッキーの手羽先」だ。ちなみに、この店にはちゃんとした別の正式名称がある。なのに、お客がこのお店のことを「偽〇〇」と呼ぶのは少々酷ではなかろうか?
定番メニューの手羽先を食べてみると、それが批評ではなく愛称であることがよくわかる。とにかく美味しく、赤道近くの気候柄、ビールともたいへんよく合うのだ。太りやすい体質の私だが、この偽ミッキーの前では「糖質・プリン体制限」などとはは言いたくなくなってしまう。
月15万円でセレブ生活ができる土地
ここクアラルンプールは、億万長者でなくとも大変豪華に暮らせる大変面白い土地だ。日本人駐在者も多く住む高級エリアに「モント・キアラ」と呼ばれる土地があるが、そこでは個室が3つ以上あり、広々としたリビングとバルコニーのコンドミニアムが、共有プールまで付いて賃料月額15万円が相場である。
不動産相場が、お隣シンガポールのたった5分の1水準で収まっていることになる。日本食屋さんもたくさんあり、日本の食材調達にも、よほどこだわる人以外近くのスーパーで完結できる。
クアラルンプールは住まいが「極度にお値打ち」な分、家族と住みながらビジネスををするにも大変便利である。そもそももって、東南アジアならどの国でも、ビジネスをする際「国内市場」という概念よりも「東南アジア市場」全体を捉えて考える場合が多い。
ソフトバンクのビジョンファンドやトヨタも投資し、今や東南アジアのライドシェア市場を寡占するGrabは、もともとクアラルンプールの小汚いガレージで生まれた。市場を考える際、「国境」という境界線が、日本ほど意識されないのだ。これにはいくつか理由がある。
まず、この地域の人々はたいてい英語を話せる。シンガポールでは英語、北京語、マレー語、タミル語の4つすべてが正式言語であり、マレーシアでもマレーシア語以外に英語も正式言語として採択する州がある。隣国同士の距離も近く、モント・キアラへは、お隣インドネシアの焼き畑農業の煙が海を渡って流れてくる。