考えてみれば、ハーバードは全米から優秀な学生が集まり、日本の東大同様に保護者も高所得者が多い一方で、ローンで学費をまかなって来ている人もいる。大学も高給を受ける超有名教授もいれば、そうでない一般職員もいる。アメリカは格差が激しい国だが、ハーバードでさえもこうした格差が存在し、「オキュパイ・ムーブメント」が起こる素地があるともいえる。
先日自分の研究のリサーチを兼ねてワシントンDCに行ったが、ワシントンでもオキュパイ運動を展開していた。ホワイトハウスと議会を結ぶ大通りに近い広場にテントが林立していたが、意外にも静かな運動を展開しており、テレビでよく報道されるニューヨークとは趣が違っていた。
初めてDCを訪問したが、世界を動かす街にしては、予想したよりは小さいという印象だった。DCの中心に位置するホワイトハウス周辺は、ちょうど大統領夫妻の不在中に窓が銃撃されるという事件があった直後で、警備の警察官なども緊張感があった。
国民との距離が近い?大統領
実際にホワイトハウスに足を運んでみて意外だったのは、一般の人が歩く道と建物までの距離がそんなに遠くないということだった。フェンス越しに大声を出せば大統領にも届くとも思われるような距離であり(実際には届かないのだろうが)、この日はシリア問題に対するアメリカ政府への要求をする市民団体がハンドマイクで大声を上げて運動をしていた。
リンカーン大統領の時代には大統領と話をしたい人がホワイトハウスに行けば、市民が直接面会できた時期もあったそうだ。日本の首相官邸のものものしい警備に比べれば一見、ソフトな警備体制にもみえるが、おそらく素人にはわからないあらゆる場所に目が光っているのだろう。
ホワイトハウスから少し離れているが議会議事堂があり、「キャピタルヒル(議事堂の丘)」といわれるだけあって丘の上に立ってワシントンの街を見通していた。全体の大きさはホワイトハウスよりも大きく、威容を誇っている。
いわずとしれたアメリカの民主政治の中心だが、時には大統領との緊張関係にあることも確かで、オバマ大統領は議会対策に苦労している。アメリカは来年の大統領選挙を控えて政治は機能不全に陥っており、先日も米国の財政赤字削減策について議論を続けていた議会の超党派の特別委員会は期限となっていた11月23日までに合意することを断念した。
税、財政をめぐる民主、共和両党の対立は当面解決できない可能性が高まったことになり、今後、米国の政治に大きな影響を与えることが予想されている。この夏以降、政治の混迷はどんどん深まっており、欧州問題などの影響もあって、経済も全く元気がない。オバマ大統領が来年再選されるのかどうか、不透明感は日増しに高まっているようだ。
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