2024年7月16日(火)

中年留学日記

2011年12月1日

 11月に入るとボストン近郊は一気に寒くなり、ハーバードのあるケンブリッジも冬の装いが強まってくる。ハーバードの大学構内も落ち葉におおわれ、季節の変化を感じる。そうした中、大学では中間試験を経て、日々の授業はカリキュラム通りに進んでゆくが、世の中の動きとも決して無縁ではない。

ハーバードにも波及した「オキュパイ・ムーブメント」のテント村

 ニューヨークが発火点となり、全米各地、ひいては世界各国にまで広がった「オキュパイ・ムーブメント(占有運動)」が既にボストンに波及していたが、ついにハーバードにも及んだ。学生たちが大学構内の中心にあるハーバードヤードにテントを張り、オキュパイを始めたのだ。

  ヤードの中心にキャンプで使うようなテントが十数張り置かれ、ビラを巻いている。ただ運動としてはいたって穏健で、ハーバードの関係者の中にも存在する大きな所得格差を是正してゆこうというのが趣旨だ。授業のある時間帯はテント周辺にいる学生の数も授業に出るため、実際は非常に静かになる。

いつもと違って静かなキャンパス

 ただこの動きに敏感になったのが大学当局で、ハーバード以外の外部の活動家をしめ出す目的で大学の門に検問所を設けて、大学警察「ハーバードポリス」がハーバードのIDを示した人しか中に入れない措置をとっていた。ハーバードの学部の1年生はヤードを囲む学生寮で1年間寮生活を送るのが長い伝統になっているが、大学側の言い分は学生や学校関係者の安全を確保することが最重要ということだ。

  しかし本音は、大学に関係ない人たちが加わって過激な運動にならないことを防ぎたいという点にある。普段なら観光客でにぎわう大学構内もIDがないと入れないため外部の人はシャットアウトされ、学生と関係者しかいないという静かな教育空間になった。大学管理下での運動であり、見方によっては甘っちょろい運動なのかもしれないが、それでもニューヨークタイムズはインターネット版のトップページに写真でこの動きを紹介していた。

  実際に何を考えて運動をしているのか、テント村でビラ配りしていた学生に話しかけてみた。学生は、「オキュパイ・ムーブメントの一環であり、学生をはじめ教員や職員の支援も受けている。ハーバードの中で支持を広げてゆきたい」と語る。運動は「言論の自由」という観点から、大学側の承認も得ていて、教職員からは150人を超える賛同の署名が集まったそうだ。大学全体では800を超える署名を集め、教職員も一定の割合で運動に賛同している様子が見て取れる。


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