2022年8月10日(水)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年5月8日

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米比相互防衛条約の適用を初めて明言

 ポンペオの発言は、南シナ海における米比相互防衛条約の適用を初めて明言したということで話題となった。常識的には南シナ海は太平洋の一部であるが、中国が九段線を主張していることを念頭に、明確化したということと思われる。フィリピン側は、かねてより、スプラトリー諸島のフィリピンが実効支配する島が適用対象に含まれることを明確化したいと欲していたようである。米比相互防衛条約に定める共同防衛の適用範囲が明確化されたことが引き金となって、米比同盟をテストすべく、中国が船舶の蝟集を強化したという可能性は考えられる。

 4月4日、集会で演説したドゥテルテ大統領は「請い求めることはしない、ただパグアサ島に構うなと言っているだけだ。そこには兵士達がいる。島に触るというのなら話は別だ。兵士達に自爆攻撃の準備をするよう命ずる」と、彼一流の言い方で中国に警告した。

 同日、フィリピン外務省は声明を発表し、中国の行動はフィリピンの主権を犯すものだと非難している。しかし、この声明では、フィリピンはASEANと中国で合意した南シナ海行動宣言には言及しているが、2016年7月の仲裁裁判所の裁定(中国の主張する九段線を退けた)には一切言及がない。中国の行動を非難するのであれば、海洋法裁判所の裁定にこそ最大の根拠を見出し得るはずである。今なおフィリピンが中国に及び腰であることを窺わせる。

 そのことはともかく、ドゥテルテが中国に毅然と対する姿勢を示したことは歓迎できる。しかし、これは5月13日に予定されている統一国政・地方選挙を睨んだ一時的で便宜的な動機があってのことかも知れない。ドゥテルテが従来の行き方を変え、毅然とした態度を維持するか否かは見極めを要しよう。もちろん、中国がやり過ぎて米国とフィリピンの同盟関係強化に手を貸すことになったという可能性はあるが、そう評価を下すのは時期尚早であろう。

  
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