富裕層を対象とした米国の中古住宅への不動産投資が静かなブームになっている。その主な理由は、円建て資産をドル建てに置き換えることで資産の通貨分散を図れることに加え、米国の築22年以上経過した中古住宅を購入すると、建物価格評価分を4年間で償却できることから、
テキサス州が人気
海外不動産協会が3月30日に開催した第1回海外不動産フォーラムには数百人の参加者があり、個人投資家の間に海外の不動産への投資に関心が高まっていることをうかがわせた。こうした米国の中古住宅を紹介しているのが、東証1部上場のオープンハウス(東京都千代田区)、WINWIN Properties Japan(同港区)、リストサザビーズインターナショナルリアルテイ(横浜市)といった企業で、新規に参入も増えている。昨年からセミナーなどを開いて投資を呼び掛けており、購入候補となる物件を参加者に提示し、早速、商談に入るケースもある。
この数年でかなりの個人投資家が実際に米国にある中古住宅を購入している。人気になっているのはテキサス州のダラスやヒューストンといった人口が増えて成長している都市だ。オープンハウスは現在主にダラス近郊、リストはヒューストン近郊の物件を推奨している。ニューヨークやロサンゼルスといった巨大都市の不動産は既に高値になっているため、値上がりする可能性が低いことから、現状はこうした大都市の物件はあまり手掛けていない。
なぜ米国の中古住宅が投資対象になるのか。その理由は、
- 米国の不動産は取引の透明性が高く、安心の不動産取引
- 人口が増えている地域の不動産のため価格が上昇傾向にあり、売却時にキャピタルゲインを期待
- 空室率が低いため高い利回りが見込める
- 4年間で償却ができるという税法上のメリット
- ドル資産を保有することで、資産分散効果の期待
などが挙げられる。
4年で減価償却
税法上の利点をみてみよう。不動産について米国と日本の大きな違いは、建物と土地の評価が異なる点だ。日本では土地を重視して、建物が建てられて10年以上も経過すると、その不動産価値は8割が土地で2割が建物だが、米国は逆で建物の割合が8割近くあり、土地の割合が2割程度と日本と全く異なる。さらに木造住宅の場合、築22年を超えると4年間で短期償却できるため、年間の償却額を高額にすることが可能になる。
実際の事例で計算してみると、年収3000万円の人が築22年以上経過した5000万円する中古住宅を購入したとすると、5000万円の8割、つまり4000万円を4年間で償却できるため、毎年1000万円を減価償却費として経費で落とせる。
購入した中古住宅を賃貸に出して年間賃料収入が200万円あったと仮定し、課税総所得2581万円とすると、2581万円に200万円を加えたものから、1000万円を減価償却として差し引くことができるため、課税総所得は1781万円になり、これに課税される所得税・住民税は約782万円になる。
一方、不動産を購入しない場合は、課税総所得は2581万円のままのため、所得税・住民税は1188万円で、年間約406万円もの節税効果が見込め、具体的には確定申告をして税金の還付を受けることになる。
不動産所得は、保有期間中の所得はほかの所得と減価償却費を損益通算することができるが、減価償却を終えた物件を売却する際には、売却益(譲渡益)に対する課税が発生する。保有期間が5年以内のものは短期譲渡所得となり約39%の課税になる。5年超のものは長期譲渡所得となり約20%となり、他の所得と通算しない分離課税となる。このため、不動産を売却する場合は5年以上経過して売れば、譲渡益課税が約20%に抑えられる点も留意しておく必要がある。