2月のハノイでの米朝首脳会談の物別れの後、このところ、北による新型誘導兵器の発射実験、北によるポンペオ国務長官とボルトン補佐官の排除要求、金正恩とプーチンの首脳会談など、米朝関係に大きな影響を与え得る出来事が続いている。
まず、北朝鮮の国営メディアは4月17日、金正恩立会いのもと、新型誘導兵器の発射実験を行ったと伝えた。金正恩は「この武器の開発の完成は軍の戦闘力強化に非常に大きな意味を持つ」と述べ、結果に満足したとのことである。
金正恩が実験に立ち会い、それを北朝鮮が発表したのは、米中交渉が停滞している中で、米国を威嚇し、ないしは米国を牽制するためとの見方が一般的のようである。ただ、今回の実験は、実際に米国に対する威嚇ないし牽制として効果があるのか分からない。
威嚇ないし牽制として意味があるためには、米国が発表を深刻に受け止め、北朝鮮に対する政策を再検討する必要があるが、現時点ではそのような兆候は見られない。今後も、そうなりそうにない。
むしろ、発表は、米国の北朝鮮に対する不信感を増やすことになるのではないか。そうであるとすれば、発表は北朝鮮にとって逆効果となり得る。
しかし、北朝鮮は核やICBMの実験を再開していないし、金正恩はトランプとの再交渉を示唆しており、北朝鮮が依然として米国との話し合いに期待していると思われる。トランプの側も米朝交渉の行き詰まりにも拘わらず、金正恩との関係がいいことを強調し、再交渉に意欲を示している。
北朝鮮の対米交渉戦略は、ポンペオとボルトンの排除要求という異常な事態から、どのようなことを目指しているか明らかである。北朝鮮中央通信は「ポンペオが関与すると話が旨く行かなくなる」との北朝鮮外務省関係者の発言を報じた。
北は、ポンペオが「馬鹿げたことを話し、小説のような物語を作っている」とし、トランプがポンペオを米の交渉団から外すことを望んでいる。北の関係者は別のやり取りでボルトンを「物事が分かっていない」と批判した。そして、北のプロパギャンダはトランプ批判を避け、北の外交官達は大統領と金正恩の関係は「不思議なほど素晴らしい」と述べている。
北は、2月のハノイでの首脳会談が決裂した原因を、北が非核化の約束を守るとは信用できないとの見解を持つポンペオとボルトンが、制裁解除の前に兵器や施設の開示が必要であり検証の受け入れが必要だと主張したためだと、正しく認識している。
そこで、北は、北との合意を熱望するトランプが二人の側近を外し、金正恩と個人的に取引をすることを期待し、トランプとポンペオ、ボルトンとの離間を図っている。これが功を奏する可能性がないとは言い切れない。トランプのスタンドプレー的トップ外交の弱点が如実に露呈している形である。