前向きに読み解く経済の裏側

2019年5月13日

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ジョブ型採用は即戦力を求めるので学生は不利

 ジョブ型採用というのは、「我が球団は投手を募集します」といった募集を行うものですから、即戦力を募集するものであって、過去に投手の経験と実績が無いとなかなか採用されません。

 採用された側も「私は投手です。今は偶然この球団に所属していますが、将来は他球団の投手になるかも知れません」という選手になるわけです。

 一方で、メンバーシップ型採用というのはポテンシャル採用です。「野球選手募集。資質があれば未経験者でも可」といった募集を行なうものですから、「私は運動神経が優れていて、気力も体力もありますから、鍛えていただければ立派な野球選手になれると思います」と言えば採用されるかもしれません。

 採用されたら、「私は当球団の選手です。今は偶然投手をやっていますが、将来は他のポジションに変わるかもしれません」という選手になるわけです。

 メンバーシップ型であれば、学生でも採用される可能性は高いでしょう。しかし、ジョブ型になると、学生が採用される可能性は格段に低くなります。日本の大学(文系)の多くは、企業の即戦力を育成する所ではなく、「論理的に考える訓練」等をして学生の「地頭」を鍛えようとする所だからです。

 球団であれば、高校野球等の経験と実績から即戦力となる学生を選別する事が出来るため、ジョブ型採用も可能なのでしょうが、それ以外は難しいのです。

若手に関しては、ジョブ型採用が増えるとは考えにくい

 学生としては、即戦力を求めるジョブ型採用では、経験者にかないませんから、新卒一括採用に応募する事が基本でしょう。

 企業としても、ジョブ型で新卒を採用する事はリスクが大きすぎるので、メンバーシップ型は新卒で採用し、ジョブ型は転職者を採用することになるでしょう。

 もっとも、それも容易ではありません。野球選手であれば、他球団での実績が誰の目にも明らかですから、即戦力としての評価が容易ですが、「他社の経理部に10年在籍していました」という転職希望者がいたとして、候補者の経理の能力が高いのか否かを外部から判定することは容易ではないでしょう。

 そうだとすると、「能力面や人格面で問題があって他社で出世できなかった人が転職を希望してくる」、という可能性も高いわけです。もちろん、転職希望者の中には「無能な上司に愛想を尽かした優秀な若手社員」「ブラック企業から逃げ出してきた優秀な若手社員」「自己都合で転職する必要が生じた優秀な若手社員」なども含まれているでしょうが、期待値としてはそれほど高くないかもしれませんね。

 そうだとすると、採用担当者としては、「わざわざ他社の文化に染まった人を中途採用するより、新卒をメンバーシップ型で採用した方が良い」と考える可能性もあるでしょう。

 今ひとつ、メンバーシップ型が優れているのは、様々な仕事を体験させてみて、各自の適性を見極めることができることです。「経理部門では平凡な社員であっても、営業をやらせたら非常に優秀であった」という事は、ジョブ型では起こりにくいでしょうから。

 そうしたことを考えると、企業の若手採用は引き続き新卒一括採用が中心であり、ジョブ型採用は「例外的な転職者の受け入れ」ということに止まると思われます。

 もしかすると、今回の共同提案の結果は「学生の就職活動が長期化して学生も採用担当者も疲弊するだけ」に終わるかもしれませんね。

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