次に、意思決定プロセスの透明化と決定事項の周知方法も工夫するべきだろう。例えば、日本企業の会議は情報共有や事後承認の場となっており、せっかく時間をかけて各部門の代表者が集まっているにもかかわらず、その知は生かされない。しかも、そのやり方では会議に参加する代表者は、自らの意見を洗練させ、発表・討議する意欲はわかない。
そうではなく、会場で各代表者が討議し結論を出す。その上で、会議の幹事が代表して関係者が起こすべきアクションを決める。そしてそれらを記載した文書を、会議終了後速やかにオープンな形で周知すればどうだろうか。各部門が出すべき結果は他部署にもみられているし、上司も部下も相互にやるべきことが明確にわかっている。その内容を見れば、そもそも会議に参加した代表者が準備をして臨んだのかも一目瞭然となる。したがって、自然とチーム全体が責任をもって動けるようになるだろう。
最後に、リーダーは設定された課題の結果を求める上で、チームに対して厳しく接することも必要だ。なぜなら結果が出なければ結局部下を守れず、努力に報いることもできないからだ。
しかし、厳しく結果を求めることと、権威をかさにきて指示をするのとは全く違う。リーダーに必要なのは結果を追い求め、戦略を実行する上で、チーム個々人の能力にあった延長線をひくことだ。それを達成するためのサポートも欠かしてはいけない。
これは自分自身が米日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)で得た経験にも基づいている。私は相当凸凹した能力の人間だが、P&Gの最初の上司は私の特徴をつかみ、得意な仕事を三つやらせて、一つだけ、ちょっと工夫しないとできない仕事をやらせてくれた。得意な仕事で自信がつき、工夫のいる仕事で自身の能力が伸びていくのを感じた。
今後はますます、売る側と買う側の情報の非対称性はなくなっていくだろう。金融商品や不動産など、消費者の購入機会が少なく、非対称性に頼ってきた産業ほど、ITにその利権を奪われていくはずだ。
その環境の変化に自分ひとりでついていけると思っている経営層がいれば、考えを改めたほうがいい。組織全体の「思考の多様性」を高めて消費者ニーズを的確につかみ、意思決定とその後の行動を迅速化することが、成功への要件だ。
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