Wedge創刊30周年記念インタビュー・新時代に挑む30人

2019年6月25日

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本記事掲載のWedge5月号『創刊30周年記念インタビュー「新時代に挑む30人」』では、「ホンダジェット」の生みの親・藤野道格氏ラグビー日本代表・リーチ・マイケル氏、USJ復活の立役者でマーケターの森岡毅氏、大峯千日回峰行を満行した大阿闍梨・塩沼亮潤氏など様々な分野で令和の時代を牽引していく30人にインタビューを行いました。

USJをV字回復させた日本を代表するマーケターは、現在、マーケティング力を強化したい日本企業の軍師として活動する。消費者ニーズをとらえる秘訣を聞いた。

森岡 毅(もりおか・つよし):1972年生まれ。神戸大学経営学部卒業後、96年P&G入社。2010年にUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)に入社し、年間集客数1500万人に迫る世界第4位のテーマパークとして再建。17年に退社後、「刀」を設立。4月に『苦しかったときの話をしようか』(ダイヤモンド社)を上梓。 (写真・さとうわたる)

 失礼な言い方だが、私は日本企業が「作れば売れる時代の呪い」にかかり続けていると思う。かつては大量生産・大量販売を前提として、より他社商品・サービスに比べて性能を向上し、より早くそれらを市場に投入すればよかった。

 しかし、日本の市場は飽和しており、今後は人口減少にともなって縮小していく。さらに、現在はスマホで簡単に自分に合うものを探し、購入できるようになったことから、消費者のニーズは多様化している。

 こうした市場や消費の変化に対応できていない企業が多すぎる。総合スーパーや百貨店という業態が危ないと言われたのはもう20年以上前の話だが、いまだに変革は起きていない。

 消費者のニーズやその行動は大きく変化しているが、一方で、消費者は変わることなく頭の中にある複数の商品やサービスの中から、相対的な好意度(プレファレンス)によって購入するものを決めている。

 ここで重要なのは、消費者のプレファレンスを左右する商品・サービスに関する情報の取り方が、時代とともに変わり、多様化していくということだ。例えば家電を買うとき、かつて消費者は地域のメーカーの販売代理店で情報を仕入れていた。その後、家電量販店に行くようになり、今ではネットでも商品・サービス情報を比較するようになった。

 今後日本企業は、多様化する消費者ニーズと、商品・サービス情報の取得経路にますます対応していかなければならない。そのためには、複眼的な視点で戦略を策定、実行する組織に変革すべきだ。

 まずは、意思決定層への情報集約をうまく行わなければならない。極端な例だが、日本において経営層が新入社員の意見に真剣に耳を傾け、経営に生かそうとしている企業がどれだけあるだろうか。多様化する消費者ニーズをとらえる上で、上司と部下、経営者と平社員などの立場にとらわれていてはいけない。上司には上司の、部下には部下なりの知見があるものだ。どの意見も同等のものとして吸い上げる仕組みが必要である。

 組織の文化を変えるためには、分け隔てなく意見を吸い上げることで成果を出せた「成功体験」が必要になる。私の経験上、これまで出してきた結果以上の成果を出すためには、チームの一人ひとりがベスト以上の力を出さなければならない。他人のアイデアでビジネスがうまくいった経験があれば、「年功序列」に関係なく、多くの人の意見を率先して求めるものだ。こうした体験を多くの日本企業にもしてもらいたいと思っている。だからこそ、これまでの意見集約の仕組みを変える必要がある。

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