Wedge創刊30周年記念インタビュー・新時代に挑む30人

2019年6月17日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 社内でもこれが実践され、「チームの定例会の場で、自分で描いたマイルストーン(目標)を発表することで、社員の一人ひとりが個人の技術力がどのあたりにあるかを自ら確かめながら、ゴールを目指すことができる」という。この長短の両方の視点を全員が持つことで、「未体験」の乗り物を生み出すことができたともいえる。

 こうした考え方を若い世代に伝えるには「時代が違うので昔のスタイルで説教をしても駄目で、根性論やチーム力だけでは世界のトップにはなれない。努力することはもちろん大切だが、ライバルにも才能、能力、センス、選択眼のある優秀な人材がそろっているので、そういう観点から個人の能力も必要だ。これからはほんの少しの差が大きな差になる」という。

 この「小さな差」の蓄積が、ホンダジェットの装備などに生かされている。先進アビオニクスを採用したホンダジェットのコックピットは、ビジネスジェット機では初となるタッチスクリーンコントローラであらゆる飛行システムの操作が可能となり、操縦性が優れている。また、乗り心地を良くするために機内では高周波数の騒音対策、プライバシーが保てる化粧室など、ライバル機にはない色々な工夫がある。

 ホンダジェットは、零式戦闘機など日本における過去の高度な航空機技術の高さの延長としてノスタルジーを交えて語られることがあるが、実はそうではない。「過去がどうだったかは関係ないことで、スポーツでもそうだが、2年もたてば技術も大きく変わる。会社のイメージやマネージメントの考え方も同様に変わっていくべきだ」と話す。

 日本の産業を見渡してみると、部品レベルでは世界的な競争力があるものの、この部品を統合させたヒット商品が見当たらない。その違いについて藤野は「スマートフォンがすごいのは、携帯電話と携帯情報端末の融合が初期のコンセプトであるが、現在は全く次元の異なる価値を生み出していることだ。アマゾンがやっていることは通信販売からの延長かもしれないが、ちょっとした新しいサービスや視点を提供することで顧客に大きな価値を与えている」と新しい流れを指摘する。ホンダジェットは、文字通り最先端の部品を統合、システム化して、誰も成し得なかったジェット機を世に送り出すことに成功した。

 今年2月、小型ジェット機の分野では、納入機数でライバルである米セスナ社のサイテーションM2を上回り、世界ナンバーワンを2年連続で獲得した。現在は月産4~5機のペースで生産し、増産体制も視野に入れている。

 主要な市場は欧米だが、日本でも販売を開始、「日本では都市部だけではなく地方の富裕層にもニーズがあると思う。共同で購入して共同で利用するという使い方もあり、プライベートジェットの便利さをもっと多くの日本の方々にも知ってもらいたい」と意欲的だ。ハイテクの頂点に立つジェット機の分野で成し遂げた実績は、新しいモノ作りの在り方を示唆している。

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