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2020年1月5日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 守護さんとアザムさんの出会いが、ひとつのプロジェクトを生んだ。ハラール対応したお好み焼きの店を作ろうというものだ。

 広島お好み焼きの観光名所である「駅前ひろば」でお好み焼き店「かさねがさね」を手掛けていた観光企画運営会社mintの石飛聡司社長が協力を申し出た。日本旅行ブームで外国人客が目に見えて増えていたが、イスラム教徒が店に入って来ない理由が「ハラール」にあると分かったからだ。

 とんとん拍子で話が進み、19年1月に「駅前ひろば」にハラールお好み焼き「銘々MeiMei」をオープンさせた。これまで豚肉を焼いていた鉄板はイスラム教徒のアザムさんが磨いて清め、メニューからは一切、豚肉関連素材を排除した。

 売り物は牛肉や鶏肉。ハラール屠畜をしている業者は日本全国で6社。うち全頭ハラール処理をしているのは3社しかない。

留学生など多くのイスラム教徒がお店にやってくる

 実は「銘々」ののれんには、どこにもハラールと書かれていない。壁には素材はハラール処理をした牛肉を使っていることなど、「ポリシー」を掲げた張り紙があるが、ほとんど目を向ける人はいない。

 「ハラールと前面に出すと何か特殊な料理なのではないかと誤解される。味や素材にこだわっている店であれば、日本人客にも人気が出る」と守護さんは言う。

 ハラール素材は生産者や屠畜業者が明確で、素材の安全性は高い。実際、「銘々」を訪れる日本人客は、ハラールお好み焼きであることにほとんど気が付かない。

「食」のことが大好きで世界中を巡った大國さん、英語でのコミュニケーションもお手のもの

 それでもイスラム教徒の観光客が相次いでお店にやってくる。SNSでの口コミや「フードダイバーシティ」の情報サイトを見て訪ねてくるのだ。そうした観光客の多くは、「お好み焼きだけでなく牛肉の鉄板焼きも注文する」と店長の大國太士さんは言う。

 日本にやってくるイスラム教徒の中には、神戸ビーフなど日本の高級料理を食べたいと思って来る人もいる。おカネもある。ところが、ハラールかどうか分からないので食べられない。ハラールをうたっているところは一杯で予約がとれないこともある。「本当なら2万5000円は使ってくれたはずなのに、2000円のカレーで終わってしまえば、おカネが日本に落ちないことになるし、当然満足度も上がりません」(守護さん)。せっかくのインバウンドを生かしていないわけだ。

 ハラールだということが分かれば、日本産の牛肉を食べるのを楽しみに日本にやってくる。

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