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2019年8月10日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 2001~03年に起きた「コーヒー危機」は、川島良彰さんがサステイナブル・コーヒーの必要性を考えるきっかけとなった。これが「世界最高品質のコーヒーを追求する会社」の立ち上げにつながった。

【川島良彰(かわしま よしあき)】
高校卒業後、エルサルバドル国立コーヒー研究所に留学し、コーヒー栽培・精選を習得する。 絶滅危惧種のマスカロコフェアをマダガスカル島で発見ことから「コーヒーハンター」と呼ばれるようになった。
(写真・湯澤 毅、以下同)

 その年、コーヒー価格は国際相場で生産コストの約半分まで大暴落したのである。そのため、世界のコーヒー生産者が壊滅的な打撃をこうむり、収入の激減で借金まみれになって土地を取られ、子どもを学校に通わせられないといった事態が発生した。

 原因はコーヒーの世界に投資ファンドが参入したこと。国際相場を見て売り買いされるマネーゲームの対象になった結果、実際の需要から乖離(かいり)して相場が乱高下した。その反動が襲ったのだ。

 「このままでは生産者が食べていけず、コーヒーの品質や生産量も下がり、そのしっぺ返しが必ずある」

 そう川島さんは危機感を抱いた、という。
 
どうすれば、それを回避できるか。18歳から中南米に渡って生産者の苦労を知り尽くした川島さんの答えは明確だった。

 「国際相場に関係なく、コーヒーの品質に対してきちんと価格を設定し、継続的に生産者から直接仕入れる仕組みを作ればいい」

 コーヒー生産者から直接買い付ければ、国際相場に振り回されずに、生産者の収入は増える、というわけだ。だが、いわゆる「フェア・トレード」とは違う。何でもコスト以上で買うというのではなく、良いものを作ればその対価が支払われる。生産者が品質向上に努力すれば、収入が増える「ビジネス」の仕組みだ。

 さっそく当時勤めていたUCC上島珈琲で企画を上げた。だが、あっさり却下される。

 無理もなかった。コーヒーは国際相場で商社が買い付けたものを仕入れるのが当たり前。生豆の品質で価格を相対(あいたい)で決めるというのは、従来の業界慣行に反旗を翻すに等しかった。

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