1杯当たり3万円程度
高い値段を払う価値があるコーヒーだと、分かってもらえるようになったきっかけは、高級ホテルのワインスクールに通う人たちとの出会いだった。コーヒー通ではなく、ワイン通の人たちがミカフェートを世に広めてくれたのである。次にお客さんになったのが葉巻愛好家。コーヒーを嗜好品と見てくれたのである。そんな時、日本航空がファースト・クラス用に「グラン クリュ カフェ」を採用する。これが「ミカフェート」を世に知らしめる大きなきっかけになった。
品質にこだわる川島さんは、コーヒーの輸送方法も変えた。日本で流通しているコーヒーの大半は通常のドライコンテナで運ばれる。赤道直下では高温になり品質の劣化は避けられない。ミカフェートのコーヒーは温度を一定に保てるリーファーコンテナを使い、「グラン クリュ カフェ」は空輸する。
生豆の保管方法を確立し、世界で初めてコーヒーのビンテージ化にも成功した。焙煎した「グラン クリュ カフェ」は香りを逃さないようにシャンパンボトルに密封されて販売される。1本100グラム(約5杯分)で、15万円するものもある。1杯当たり3万円程度だ。
「グラン クリュ カフェ」のコーヒーができる畑には必ず毎年川島さんが足を運ぶ。現在6カ国9つの農場で収穫したものを「グラン クリュ カフェ」として取り扱っている。特級だった畑でも、品質が悪ければ、その年は発売しない。
「プルミエ クリュ カフェ」というカテゴリーは、優良農園の中の一級畑だけで穫(と)れた最高クラスのコーヒーだ。 畑の選別、栽培から収穫、精選、輸送、保管の全行程に設けたミカフェートの品質基準を全てクリアしたものに付けられる。
川島さんは、農家と話し、お互いの考え方に共鳴しなければ取引を始めない。「生産者とはフィフティ・フィフティ(対等)ですから」と川島さんは言う。
年商12億円になったミカフェートの売り上げの7割は、卸販売になった。川島さんのスタイルに共鳴したホテルやレストランなどに販売している。個人経営のコーヒー店にも卸すが、取引開始前に必ず川島さんが面接する。コーヒーを売買する関係を超えて、生産者に利益をもたらしコーヒー栽培を持続させるための「価値を生み出す同志」を広げるための関門なのだろう。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。