外国人留学生を人手不足に苦しむ日本企業の戦力として育て上げたい─。真の「共生」のため、誰にも負けない日本への愛情を胸に奔走する。
外国人留学生を人手不足に苦しむ日本企業の戦力として育て上げたい─。真の「共生」のため、誰にも負けない日本への愛情を胸に奔走する。
日本で学ぶ留学生が30万人を突破した。人材不足に悩む経済界は、彼らが卒業後も国内で活躍することに期待を寄せる中、ものづくりの街・名古屋で、米国人のエリオット・コンティが留学生と企業との橋渡しに奮闘している。
エリオットが事務局長を務める「グローバル愛知」は、日本で働くことを目指す留学生の就職活動をサポートする。企業の工場見学や実際に働く社員との意見交換会などを開催し、彼らの不安を解消する。一方で、企業側も留学生が持つ疑問を把握でき、相互理解につながっている。
日本語教育やマナー講座も行い、就職意欲や実務での能力向上にも力を注ぐ。人材派遣業とは一線を画し、学生からはもちろん、企業からも成功報酬は一切受け取らない。2017年の発足以来、620人以上の就職支援を行い、うち約70人を入社に導いてきた。保守的で外国人採用に後ろ向きな東海地方で着実に実績を積んでいる。
エリオットの現在の活動は、大学院での3年間の調査研究を含む、7年間の日本での在留経験に端を発する。交換留学を振り出しに、大阪市立大学大学院へと進学し、研究テーマを大阪市西成区に据え、フィールドワークを重ねた。自らも西成のど真ん中で暮らすようになり、「さまざまな日本人や外国人が支えあい、形成する街の姿が素晴らしい」と、この街で「共生」の魅力に引き込まれていった。
「これからの日本には、高い意識を持った外国人の力が必要だ」。以前より交流のあった、名古屋市の製造業・ナガサキ工業の長崎洋二社長の思いに突き動かされ、エリオットは米国での博士課程進学を辞めて同社への就職を決意する。そして長崎と共にグローバル愛知を立ち上げ、事務局長を務めることになった。
「われわれの活動が留学生、企業、そして日本社会のためとなる、『三方よし』の精神が重要。マッチングだけで終わらせず、留学生がしっかり定着するためのアフターフォローが求められている」とエリオットは語る。というのも、留学生の受け入れ側が中小企業だと、彼らと円滑にコミュニケーションをとれる人材が少なく、離職リスクを懸念する声を多く耳にしたからだ。
そこで今春から、就職した留学生と面談し、企業・留学生双方の不安点を解消する取り組みを始めた。今後は、そこで得た声やアンケートなどを集約して、留学生が抱える思いや、ミスマッチを防ぐ方法を広く企業に伝えたいという。
「企業が人手不足だからといっても、留学生が言語などのスキル向上を怠れば、活躍することは難しい。あえて厳しい言葉をかけることもある。彼らと真摯(しんし)に向き合うことが、本当の意味での『共生』につながる」
流ちょうな日本語で、時に笑顔にあふれ、時に真剣なまなざしで日本への思いを語る表情には、留学生の「日本のお兄さん」としての覚悟が滲(にじ)み出ている。プライベートでは今秋、「第二の故郷」大阪で出会った日本人女性と結婚する。日本への情熱はさらに高まりそうだ。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。