2023年1月27日(金)

Washington Files

2019年9月2日

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斎藤 彰 (さいとう・あきら)

ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長

1966年早稲田大学卒業。68年米カリフォルニア州立大学バークレー校大学院修士課程修了、70年読売新聞入社。ワシントン常駐特派員を2度務めた後、アメリカ総局長、東京本社取締役調査研究本部長などを歴任。著書に『中国VSアメリカ』『アメリカはカムバックする!』(いずれもウェッジ)がある。

いらだちを見せた在米ユダヤ人社会

 ナンシー・ペロシ下院議長はただちに「イスラエルの措置は極めて失望すべき決定であり、再考すべきだ」と反発、ステニー・ホイヤー下院院内総務も「とんでもない措置だ」と怒りをあらわにした。

 野党民主党のみならず、共和党内でも批判があいつぎ、マルコ・ルビオ上院議員はみずからのツイートで「入国拒否は過ちだ。これまでイスラエルを批判してきた両議員の主張をかえって正当化させることになる」と異を唱えた。

 しかし、今回のイスラエルの措置に最もいらだちを見せたのは、在米ユダヤ人社会だ。

 伝統的にイスラエル政府を支持し、米議会に対する強力なユダヤ・ロビーとして知られる「全米イスラエル公共委員会American Israel Public Affairs Committee」(AIPAC)はただちにツイートで「われわれはイスラエル製品・サービスのボイコット運動を支持する両議員とは見解を異にする」との前提に立った上で「しかし、米連邦議員は誰であれ、民主的同盟国であるイスラエルでの経験をするために訪問が認められるべきだと信じる」との立場を表明した。

 ワシントン・ポスト紙によると、同様に、これまで一貫してイスラエルを支持してきたユダヤ人で民主党のニタ・ロウリー、ブラッドリー・シュナイダー、ジョシュ・ゴッテイマー3下院議員も、事前にイスラエル駐米大使に電話し「入国拒否」に反対する考えを伝えたという。

 もともと在米ユダヤ人社会では、祖国イスラエルに対する忠誠は以前から盤石ではあるものの、パレスチナ問題などに対するイスラエル政府の政策などをめぐり、民主、共和両党支持派の間の対立もからみ、立場と見解は分かれてきた。

 「アトランティック」誌電子版(2019年4月8日付け)は、その現状について「右派・保守」「左派・リベラル」「中立」の3グループにまず分類、紹介している:

 「第一グループの多くのユダヤ人は共和党寄りで宗教心も厚く、ネタニヤフ保守政権を支持している。たびたび祖国イスラエルを旅し、家族を住まわせ、こどもたちを学校に通わせるなどしており、政権担い手がだれであれ、民主的選挙で選ばれた指導者が打ち出す安全保障上の政策決定に敬意を払うべきだと考えている」

 「第二グループはこれと反対の左派の活動家たちや組織から成り、パレスチナ人を追い詰める諸政策を批判、右派強硬派のネタニヤフとトランプの密接な関係時維持に嫌悪感を抱く。共和党とユダヤグループとの結束を呼びかける集会でトランプ大統領が演説しようとした際に、これを妨害しようとしたのもこのグループであり、イスラエルがパレスチナ人の領土を占領している現実を踏まえ、政府に対しより進歩的政策の推進を呼びかける若い世代の在米ユダヤ人たちも含まれる」

 「さらにこのどちらにも属さない中間的立場のユダヤ人たちが存在する。時にイスラエルに関するAIPAC年次総会に出席、親イスラエルの立場ながら、ネタニヤフ政権下の政策に不満を表明するグループも含まれる。彼らはネタニヤフ政権の継続を敬遠する一方、政治的不快感と宗教・国家との関係の狭間でどう立ち振る舞うべきか苦慮してきた」

 同誌はその上で「ネタニヤフ氏が選挙公約で、ヨルダン川西岸併合の方針を明確にして以来、3グループ間の対立がより深刻化した。併合を、政権内超保守派支持取り付けのための“最後のあがき”と懐疑的に受け止める見方もある一方、より進歩的組織は『併合は西岸とガザ地区のパレスチナ住民の基本的権利と自由を奪うもの』だとしてより深刻に受け止めている」と述べている。


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