「民主党に投票することは見識の絶対的欠如と不義を意味する」
批判を招いたトランプ大統領の発言
こうした在米ユダヤ人社会の立場の違いは、民主、共和両党に対する支持率に最も端的に現れている。
ギャラップ社は去る3月14日、在米ユダヤ人938人を含む全米7万5000人の有権者を対象とした政党支持率調査結果を発表した。
それによると、ユダヤ人の場合、「民主党員」と答えた人が52%、「無党派」31%だったのに対し「共和党員」はわずか16%にとどまり、共和党が劣勢にあることが明らかになった。
さらに宗教グループ別にトランプ大統領の政策に対する見解を聞いたところ、キリスト教プロテスタント信徒の間では「支持」50%、「不支持」46%であったのに対し、ユダヤ教徒の間では「支持」は26%、「不支持」71%という逆の結果となった。
一方、トランプ大統領は来年大統領選での再選に向けて、ユダヤ人票取り込みに躍起となっている。
就任以来、米大使館のエルサレム移設、ゴラン高原の「イスラエル統治領」としての認知、イランに対する強硬政策推進など、米政府が打ち出してきた一連の親イスラエル外交政策も、在米ユダヤ人社会の支持を民主党から引き離す狙いが背景としてあるとみられている。
しかし、世論調査などを見る限り、在米ユダヤ人社会でのトランプ支持取り付けはこれまでのところあまり効果がみられない。
これにいらだちを深める大統領は先月21日、ホワイトハウスで記者団に対し「(在米ユダヤ人たちが)もし民主党候補に投票するとすれば、それはイスラエルおよびユタヤ人民に対する大変な裏切り行為となる」「彼らが民主党に投票することは見識の絶対的欠如と不義を意味する」と語り、大きな物議をかもした。
さっそく翌22日のニューヨーク・タイムズ紙は何人かのユダヤ人読者からの投書を掲載したが、そのうちの一人は以下のように反論した:
「私も含め在米ユダヤ人に対して、民主党への投票が不義行為だとは、トランプは何たる傲岸無恥か。私は第一に、イスラエルではなくアメリカに対して忠誠を抱いている。もちろんイスラエルの繁栄と生存権の支持者でもある。第二に、自分がユダヤ人であるからといって、イスラエルのやることすべてを支持するわけではない。さまざま宗教、人種が存在するにもかかわらず全員が一致した考えを持つべきだというトランプの信念は間違いであり、彼の世界認識の欠如を象徴するものだ」
イラン核合意からの一方的離脱に端を発した国際危機はじめ、トランプ政権の中東外交は、ますます混迷を深めるばかりだ。
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