WEDGE REPORT

2019年9月30日

»著者プロフィール
閉じる

樫山幸夫 (かしやま・ゆきお)

元産經新聞論説委員長

元産經新聞論説委員長。政治部で中曽根首相番、竹下幹事長番、霞クラブ(外務省)詰め、ワシントン特派員、同支局長、外信部次長、編集局次長、正論調査室長兼論説委員、産経新聞社監査役を歴任。2度のワシントン勤務時代は、ホワイトハウス、国務省などを担当、米国の内政、外交など幅広く取材した。

 トランプ米大統領が、民主党のバイデン前副大統領への捜査をウクライナ政府に働きかけた疑惑は「トランプ弾劾」の動きを再燃させた。こんどばかりは、〝火勢〟が広がる気配をみせている。内部告発によって、問題の詳細が明らかにされたからだ。

 ディープ・スロート(内部情報源)による暴露は、1970年代に発覚したウォーター・ゲート事件を彷彿とさせる。この事件で告発者は、政権に不利な情報を次々に新聞にリーク、これによって、当時のニクソン大統領が辞職に追い込まれた。

 大統領選で再選をめざすため、対立候補を不利な状況に追い込もうという、ことの重大さでは、ウクライナ疑惑もウォーター・ゲート事件も根は同じだ。

 今回のディープ・スロートはだれなのか。ウクライナ疑惑はどう展開していくのだろうか。

(drante/gettyimages)

「破廉恥な権力乱用」

 今回、弾劾訴追への動きが急展開した経緯については、すでに日本の各メディア、当サイトでも詳細に報じられているが、重複を顧みず触れてみよう。

 発端は、今年8月12日付けで、米上下両院の情報特別委員長宛てに送付された告発状。9月26日に議会側から公表された。

 冒頭、「大統領が2020年の選挙で外国政府の介入を要請することを目的に権力を行使しているとの情報を得た」として、具体的に7月25日のトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の電話協議に言及。

 トランプ氏がゼレンスキー大統領に、バイデン氏と、その次男、ハンター氏について捜査を行うよう圧力をかけた事実を明らかにし、「深刻で破廉恥な法律違反、権力乱用」と糾弾、「差し迫った懸念」であるため、手続きを踏んだうえで内部告発に踏み切ったと説明している。

 告発状はさらに、ホワイトハウスの当局者が、その法律顧問からの指示で、電話協議の速記録を通常のコンピューター・システムから機密情報を保存する特別なシステムに移したとし、これらの事実は、ホワイトハウスが、両首脳のやりとりに関して、ことの重大さを認識していたからだと分析している。

 下院のペロシ議長(民主党)は弾劾訴追の正式調査開始を決断した理由について、9月24日、「トランプ政権の行為は、国家安全保障、選挙の清廉さに対する不名誉な裏切りである」と説明、大統領を激しく非難した。

 告発状の公開を受けて、ホワイトハウスは、トランプ、ゼレンスキー両首脳の談話協議の速記録を公表、間接的に問題になることはないと強気にでた。

 焦点のバイデン氏に関するやり取りをみてみる。

 トランプ氏は、ゼレンスキー氏が5月に就任したことに祝意を表したあと、おもむろに「ほかのことだが」―と切り出し、「バイデンの息子についてさまざまなことがいわれている。バイデンは、(息子の)起訴を中止させたが、多くの人がそれについて知りたがっている。司法長官と何かできることがあれば、いいことだ。バイデンは訴追を止めたことを自慢しているが、不愉快なことだ。もし調査してくれれば……」と伝えた。

 ゼレンスキー大統領は、「私は状況をよく知っている。次の検事総長は100%、私の側の人間だ。議会で承認されれば、調査を開始するだろう」と応じた。

 トランプ氏は、自らの側近のジュリア―二元ニューヨーク市長やバー司法長官と話し合ってほしいと繰り返し要請した。

 このやりとりだけなら、圧力をかけたといえるかどうかは微妙なところだが、ジュリアーニ、バー長官との話し合いを、くり返し求めていることを考えれば、そういう指摘がなされてもやむをえまい。速記録が改ざんされたのではないかとの見方もあり、9月27日付けの日経新聞は、「会談は30分続いたというが、速記録すべてをゆっくり読んでも12分程度だ」という米法律専門家の疑念を伝えた。

 速記録が公表された25日、国連総会を機会に、ニューヨークで、トランプ大統領とゼレンキー大統領が会談したが、開始前にトランプ大統領は記者団に「圧力などなかった」と疑惑を否定、ペロシ議長を「左翼勢力の影響を受けているか、彼女自身が左翼だ」と罵倒した。

 ゼレンスキー氏は、「ウクライナは独立国家だ。われわれは何をすべきか知っている」と述べたにとどまった。

関連記事

新着記事

»もっと見る