成長率目標引き下げは中国の大きなチャレンジ
短期的な中国経済の行方については様々な見方が交錯している。しかし、当面の経済成長への見方とは別に、中国経済が大きな調整局面に入っていることも事実だ。中国政府による成長率目標の引き下げはこの点を改めて浮き彫りにしたと言える。
中国経済が高成長を見直す転換期を迎えることは必ずしもマイナスではない。高成長に伴い、解決すべき経済課題も増えているからだ。なにより、経済のバランスが取れなければ持続的な成長を遂げること自体難しい。
また、長期的にも、産業構造を労働集約的なものから資本・技術集約的なものとしなければ、人民元の切り上げ・国際化や2010年代後半にも訪れると見られる生産年齢人口減少などに対応できない。
現在の中国経済は70年代半ばから後半にかけての日本経済に似ていると言われる。それは、オリンピック、万博、新幹線(超高速鉄道)開通といったかつて日本が経験した事柄が近年の中国で起きていることばかりを指しているのではない。
当時の日本は、農村部の過剰人口の都市部への移動が一段落して、人口動態面から成長を押し上げる要因が乏しくなった時期に当たっていた。為替でも円相場が大きく上昇し、石油ショックもあって産業構造全体が大きく転換することにもなった。
こういった点から見ても、現在、中国経済に生じていることは当時の日本と同じように見える。それは、日本が70年代に経験したように、高成長から安定成長に転じる中で国民の豊かさを実現できるかとの大きな課題に直面しているということだ。
中国は大胆な経済構造転換を図らねばならない時期に差し掛かっており、改革開放、南巡講話に並ぶような新たな大改革に乗り出すかどうかの正念場を迎えている。今回の成長率目標の引き下げは重いメッセージを含んでおり、その意味は、短期だけでなく、長期にわたっても見ていかなければならない。
[特集] 中国経済の危うい実態
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