2024年12月12日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年4月2日

 World Politics Review3月7日付で、Robert Farley米ケンタッキー大学准教授が、米国が、準備通貨の維持、国際海上貿易の擁護、主要国際制度の支持といった、覇権に伴う任務を負い続ける限り、何らかの「米国の世紀」は続くだろう、と論じています。

 すなわち、現在の世界の枠組みは米国が作り、管理しているものだ。この「米国の世紀」を延長させるために米国がとれる最も重要な措置は、国際社会の重要プレーヤーの多くから黙諾――たとえ嫌々だろうと――を取り付けることだ。そして今の体制の中で、インド、中国、ロシアなどの懸念に対応すれば、その体制が有益で柔軟であることが示され、「米国の世紀」を延長できる可能性がある。

 ある体制の強さと復元力は、競争相手を潰す、あるいは孤立させる能力よりも、競争相手を取り込む能力にかかっている。勿論、これは、競争相手のすべての要求を認めなければならないということではないが、必要とされる注意深い外交を弱さと考えるべきではない。むしろ、問題を外交的に処理できる能力は、強さの反映だ。

 ではどのような危険があるか。米国と他の諸大国との格差が縮小してきた中で、米国が取り得る最も危険な措置は、米国が擁護するグローバルな管理体制を弱体化させるだけでなく、米国の財政をも脅かすようなプロジェクト、例えば、イラク進攻のようなものを始めることだ。

 これまでも、「米国の例外主義」と「新しい米国の世紀」を声高に言う者は、なぜか常に米国のパワーと今日の国際制度との関係を誤って捉える政策を提言してきたことに留意すべきだ。勿論、将来については何一つ保証されてはいないが、愚かな政策は「米国の世紀」の寿命を縮めかねない一方、賢明な政策は、「米国の世紀」を修正して世界から受け入れられるものにし、結局、「米国の世紀」を引き延ばすことができるだろう、と言っています。

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 国際主義者の筆者が、米国の覇権の将来を、戦後米国が築き上げ、世界の安定と繁栄に貢献してきた国際的な諸制度の維持という観点から論じたユニークな覇権論です。

 確かに、色々な問題があるにせよ、中国、インドといった将来米国の覇権に挑戦する可能性のある国々が、国連、IMF、WTOといった機関の役割を認め、米国が作り、管理しているといってよい土俵で勝負していることは事実です。ただ、米国がこれらの諸制度、機関を支持し続け、またそれに加え、Farleyが言うように、準備通貨を維持し、国際海上貿易を擁護するためには、それに相応しい経済力が必要であり、結局は、米国が相対的にどの程度経済力を維持できるかが、「米国の世紀」を維持できるかのカギを握っていると言えるでしょう。

 

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