米連邦通信委員会(FCC)のアジト・パイ委員長が、10月28日付のウォールストリート・ジャーナル紙に「連邦通信委員会は華為技術(以下ファーウェイ)からの脅威に答える。委員会はその5G装備に新しい制限を加える票決を計画している」との寄稿をし、ファーウェイの機器の米通信網からの排除を主張している。
この寄稿は米連邦通信委員会のパイ委員長の名で行われたものであり、ファーウェイとZTEの通信機器を米国の通信網から徹底的に排除することを宣言したものである。これまでもファーウェイの機器の政府調達は禁止されてはいたが、調達禁止をFCCの補助金を受け取る地方の事業者にも広げ、今後の調達を排除するほか、これまで調達されたファーウェイなどの通信機器も撤去し、別のより安全な企業からのものに取り換えるとしている。
ファーウェイとZTEの対米輸出額は政府調達禁止などで小さくなっているとはいえ、両社にとり相当な痛手になると思われる。米中貿易紛争に5G絡みの技術覇権抗争が加わってきたと言える。
パイ委員長の投稿が10月28日付ウォールストリート・ジャーナル紙に掲載されるより前、10月25日、エスパー米国防長官は、NATO国防相理事会後、5Gの整備に関して「欧州のインフラに中国の通信事業者がより深く関わっていることに懸念を伝えた」と述べている。
ファーウェイとZTEをめぐるこの問題は、情報当局の問題、安全保障上の問題となっており、米中貿易交渉の中で解決することが困難になっていると思われる。チリでのAPREC開催がなくなり、次の米中首脳会談がいつになるか見通しが立たないが、米中関係はこの問題をめぐり、ギクシャクすることは確実である。
10月24日、ペンス副大統領が米中の経済のデカップリングは好ましくないと述べたことをとらえ、米国の対中姿勢に軟化の面もあると論じられているが、通信分野では明確にデカップリングが推進されている。
米国がファーウェイやZTEを破産させることなどはできないだろうから、結局、中国の技術を使う通信網とそれ以外の技術を使う通信網が世界で併存することになろう。日本は、米国の同盟国として、中国の技術を使わない陣営に属するしかないのではないか。安価な中国の技術に魅力を感じる国々も、かなりあるだろうと思われる。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。