2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年11月8日

 10月24日、ペンス副大統領は、米シンクタンク、ウィルソン・センターの会合にて、米中関係について約40分演説した。これは、昨年の10月4日に行った対中政策演説の第2弾とも言われる。その主要点を紹介する。

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・1年前の10月、私(ペンス)は、米国の利益や価値が中国によって害されていることをお話した。それは、中国の負債外交や軍事拡張主義、人々の信仰への抑圧や監視国家の構築、為替操作、強制的技術移転等である。

・中国のGDPは17年間で9倍となり、世界第2の経済大国となった。昨年の米国の対中貿易赤字は4000億ドルにも上り、米国の世界全体の約半分になる。過去25年で米国が中国を再建したが、その時代は終わった。

・2017年の国家安全保障戦略が示すように、中国は、もはや米国の戦略的経済的競争相手である。中国の非倫理的貿易慣行から米国の労働者を守るために、2018年にトランプ大統領は2500億ドル相当の中国製品の関税を上げた。

・知的財産権や国民のプライバシー及び国家安全保障を守るため、ファーウェイやZTE等中国企業の違法な慣行に対処した。同盟国には、中国に重要インフラやデータを管理されないように、安全な5G網を敷くよう促した。

・中国共産党は、何百万人もの人々に対して、宗教弾圧や民族浄化をしている。キリスト教の牧師を逮捕し、聖書の販売を禁止し、教会を破壊した。百万人以上のイスラム教徒のウイグル人が強制収容された。トランプ大統領は、先月、ウイグル人やイスラム教徒の迫害に関わった共産党幹部にヴィザの規制を行い、20の治安機関や中国企業に制裁を課した。

・中国からはなかなか貿易合意が得られなかったが、この11月のチリでのAPECの際に、第一段階の合意に米中が署名できることを願う。

・毎年、何千億ドルもの知的財産が盗まれ、ほとんどに中国が係わっている。Teslaの元エンジニアは、米国が開発した自動運転システムのファイル30万件を盗み、その後、中国の自動運転企業に就職した。約4年にわたる中国国家安全保障部によるハッキングでは、米国海軍10万人の氏名とデータ及び艦船の情報が盗まれた。

・今日、中国は、今まで見たことのない監視国家を打ち立てようとしている。何億もの監視カメラが設置され、少数民族は、採血されたり、指紋から声の登録、多角的顔認証、更には眼球虹彩まで取られたりする。また、中国は同様の技術をアフリカ、南米、中東等にも輸出している。それらは独裁政権によって使用されたり、新疆地区で設置されたり、時には米国企業の支援によって設置されたりしたものである。

・中国においては「軍民融合」が技術分野では行われていて、私企業だろうと国有だろうと外国企業だろうと、技術は中国軍と共有しなければならない。

・中国軍の地域における行動はますます挑発的になっている。中国は人工島を構築し軍事基地化し対艦・対空ミサイルを配置した。また、中国は、「海上民兵」と呼ぶ船を定期的に送り、フィリピンやマレーシアの船乗りを脅している。中国の海警は、ヴェトナム沖で、油や天然ガスを採掘しようとしている。

・東シナ海では、同盟国日本が、中国に対してスクランブル発進をしなければならなかった回数は、今年、過去最高となった。また中国海警は、日本が統治する尖閣諸島周辺の接続水域に連続して60日以上船舶を送った。

・中国は、「一帯一路」構想を利用して、世界の港に足場を築いている。スリランカからパキスタン、ギリシアまで中国が支配している。カンボジアにも海軍基地を建設することが、中国とカンボジアとの秘密協定で決まった。

・中国が小切手外交で、2国家の台湾との国交を断絶させ、台湾の民主主義へ圧力をかけた。トランプは台湾の自由を守るため武器の売却を許可した。

・香港は最も自由な経済を有し、独立した法機関と活発な表現の自由があり、何十万人の外国人が居住する所である。しかし、中国は、ここ数年、香港に干渉し「一国二制度」で保証された香港の権利と自由を侵してきた。トランプ大統領は、自由を支持すると明言した。

・中国は、世界で影響力を行使するとともに、米国内でも、財界、メディア、大学、シンクタンク、公務員等にアメとムチを与え、世論を誘導しようとしている。米国の多国籍企業は、中国マネーと市場に目が眩む。最近、Nikeは、自らを「社会正義のチャンピオン」と評していながら、中国政府の圧力に屈して、Houston Rockets社の製品を棚から外した。同社のジェネラル・マネージャーが、“Fight for Freedom.  Stand with Hong Kong.”と7文字ツイートしただけなのに。

・NBAの選手やオーナーは、普段、米国を非難する自由を行使するが、中国の人々の自由や権利に関しては口をつぐむ。中国共産党の側に立って、沈黙を保つNBAは、まるで、独裁政権の下請けのようだ。

・米国は中国との衝突は望まない。我々は、開かれた市場、公平な貿易、我々の価値を尊重することを求めている。

参考:‛Remarks by Vice President Pence at the Frederic V. Malek Memorial Lecture’ October 24, 2019) 

 上記のように、ペンス演説第1弾同様、かなり具体的に問題の多い中国の行動を挙げている。米国には、これらに対処しなければならないという超党派のコンセンサスがある。それでも中国マネーに惹かれる企業は多い。日本にも同様の問題はあるが、日米でどう対中共通戦略が立てられるが、今後の課題である。

  
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