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2020年1月7日

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アメリカのドナルド・トランプ大統領がイランの文化財への攻撃を示唆したことに、世界各国で批判が高まっている。

米軍は3日、イラン革命防衛隊の海外作戦を担当した精鋭「コッズ部隊」を長年指揮してきた、カシム・ソレイマニ指揮官をバグダッド空港の近くでドローンによって殺害。トランプ氏はその後、イランが報復として「アメリカ国民を拷問したり、障害を負わせたり、爆弾で吹き飛ばしたり」した場合は、イランの文化を含む52カ所の標的を攻撃するとツイートした。

これに対し国連教育科学文化機関(ユネスコ)やイギリスのドミニク・ラーブ外相などは、文化遺産は国際法で守られていると指摘している。

アメリカとイランは共に、紛争中であっても文化遺産を保護するという国際条約に署名している。文化遺産を標的にした軍事攻撃は、国際法上では戦争犯罪となる。

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トランプ氏は4日の時点で、「これは警告だ」と大文字で強調しながら、米軍がイラン国内の52カ所の施設を「標的にした」とツイートした。

「もしイラン政府がアメリカ人やアメリカの資産を直撃するなら」、米軍は「非常に素早く、かつ非常に強力に、イランとイランの文化にとってきわめて高レベルで大事な標的、イランそのものを攻撃する」と続けた。

マイク・ポンペオ国務長官はこの後、アメリカは国際法にのっとって行動すると、トランプ氏の発言を和らげようとした。

しかし大統領は5日、記者団に対してあらためて、「向こうはこちらの人間を殺しても許される。こちらの人間を拷問して一生の傷を負わせても許される。路肩爆弾を使ってこちらの人間を吹き飛ばしても許される。なのにこっちは向こうの文化遺産を触っちゃいけないって? そういうわけにはいかない」と強い調子で述べた。

ホワイトハウスのケリーアン・コンウェイ上級顧問は6日、トランプ氏は文化遺産を攻撃すると言ったのではなく、「質問を投げかけただけだ」と発言を擁護した。

コンウェイ氏はさらに、「イランには、文化遺産とも言える戦略的軍事施設がたくさんある」と述べたが、その後、イランが軍事的標的を文化遺産に偽装しているという意味ではないと釈明した。

マーク・エスパー国防長官は、米軍が文化施設を標的にすることはあるのかという質問に、「武力紛争の法に従う」と答えた。

さらに、それは「文化遺産を標的にするのは戦争犯罪に当たるため」、攻撃を否定する意味かと聞かれると、「それが武力紛争の法だ」と述べた。

ツイートに対する反応は?

ユネスコのオードリー・アズレ局長は、アメリカとイランは共に、1972年の世界遺産条約の締約国だと説明した。また、両国は1954年に締結された武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(ハーグ条約)にも参加している。

トランプ大統領は2018年、ユネスコが「反イスラエル」的な偏見を持っているとして、アメリカを脱退させている

今年の米大統領選で野党・民主党の大統領候補指名を目指しているエリザベス・ウォーレン上院議員は5日、トランプ氏の最初のツイートに対して「あなたは戦争犯罪を犯すと脅している」とツイッターで非難した。

ドミニク・ラーブ英外相は6日、文化遺跡は国際法で守られており、イギリス政府はその尊重を期待すると表明した。

イランのジャヴァド・ザリフ外相は、トランプ氏の言い分は過激派組織ISが中東で貴重な遺跡などを次々と破壊して回ったのに似ていると批判した。

ISは中東の各地で文化遺産への攻撃を行っており、シリアではパルミラ遺跡を破壊した。またアフガニスタンでは、バーミヤンの仏教遺跡群が反政府武装勢力タリバンによって破壊され、世界最大の大仏が姿を消した。


イランの文化遺産

イランにはユネスコ世界遺産に指定されている文化遺産が24カ所あり、文化的、歴史的、科学的に保護する必要があるとされている。主だったいくつかを紹介する。

  • アケメネス朝ペルシャの首都ペルセポリス。最も古い遺跡は紀元前6世紀までさかのぼる

  • イスファハーンのナクシュ・エ・ジャハン(イマーム)広場。17世紀に作られ、モスクや宮殿に囲まれている。世界で最も大きな広場のひとつ

  • テヘランのゴレスターン宮殿。1785~1925年までイランを治めていたガージャール朝時代の宮殿

このほか、ユネスコの世界遺産には登録されていないが、文化的に重要な遺産が数多く残っている。


<解説> 文化遺産への脅迫でイラン人が結束 ――サム・ファルザネフ、BBCペルシャ語

ソレイマニ司令官殺害のニュースが広まると、イラン人はすぐに分裂した。ソーシャルメディア上では、司令官の死を悼む人と祝う人もいた。

ツイッターでは特に、この分裂が激しかった。ソレイマニ氏殺害に怒る人は「ストックホルム症候群」だと批判された。その一方、殺害を擁護する人は裏切り者とレッテルを貼られた。

しかし、トランプ大統領がイランの文化遺産を標的にするという脅しをツイートすると、イラン人は反トランプで結束した。

文化遺産には宗教的ものもあれば、そうでないものもある。しかし宗教を信じているかどうかに関わらず、イラン人はみなその歴史的遺産を誇りに思っており、トランプ氏の脅しに反発した。

国内のイラン人と国外に移民したイラン人の溝を埋めるのに、愛する過去を攻撃されるほどのものはないだろう。

イランのザリフ外相はこの機を捉え、シリアで数々の文化遺産を破壊したISにトランプ大統領をなぞらえ、ツイートを連投している。


(英語記事 Trump under fire for threat to Iran cultural sites

提供元:https://www.bbc.com/japanese/51015825

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