世界中で違法伐採による森林破壊が問題になっている。サミットなど国際会議でも議題となり、違法な伐採による木材製品の流通を止めるための枠組が話し合われている。そうした事情を紹介する日本の林業研究者が、口走った言葉がある。
「ようは国産材を使えばよい。国産材はみんな合法だから」
これを聞いて筆者は愕然とした。どうやら違法伐採は発展途上国で起きているのであって、日本国内にはない、国産材はみんな合法だと思い込んでいるようだ。仮にも違法木材問題の専門家がその程度の認識なのか。日本の林業現場をあまりにも知らなさすぎる。
日本の盗伐の実情
日本でも盗伐は頻発している。筆者は、ここ数年その状況を追ってきたのだ。
盗伐と言っても森の中の1本2本程度を抜いて盗むような古典的なレベルではない。他人の山に道をつくって重機を入れ、何ヘクタールもの面積を皆伐してしまう所業だ。
しかも道の入れ方も伐り方も荒っぽくて、山崩れを誘発している。当然ながら跡地に再造林は行わない。また伐採届の偽造や発覚を遅らせるための隠蔽工作も行われる。バレても「誤伐(場所を間違った)」と主張し、わずかな賠償金で強圧的に示談を迫る。
被害者からすれば、数十年間も育ててきた木々が根こそぎ奪われてしまうわけだから怒り心頭なのだが、自治体も警察も取り合わない。知らぬ存ぜぬを通して取り締まらない。それが被害者をより苦しめる。そんな交渉過程で鬱病を発症した人も多くいる。
とくに目立つのは宮崎県だ。スギ生産量日本一を32年続くと誇るが、その裏で盗伐が横行している。2017年に結成された宮崎県盗伐被害者の会に現在170世帯が加入するが、全被害者は1000世帯を超えるだろうと言われている。