2019年の末は、北朝鮮が自ら課した米国との非核化交渉の期限に当たり、北朝鮮がどのような態度に出るかに関心が集まった。通常1日のみ開催される北朝鮮労働党の中央委員会総会が、異例4日間にわたって開かれ、米国との非核化交渉問題について真剣な討議が行われたことが推測される。一方、新年恒例の金正恩の「新年の辞」は行われなかった。 結果は、北朝鮮が遠からず新たな戦略兵器を明らかにすること、核兵器とミサイルの実験の中断を止めるという発表だった。金正恩は党中央委員会総会での報告で、「現下の情勢は、我々が今後も制裁下で生きていかなければならないことを既成事実化している」と述べるとともに、 「敵対勢力の制裁圧力を無力化するため、正面突破作戦を強行しなければならない」と述べている。制裁が解除されないことを受け止めている一方で、力による対決姿勢を鮮明にしている。
北朝鮮の非核化問題は新たな段階に入ったと言える。
北朝鮮の核危機が戻ってきたとする見方もあるが、金正恩委員長は、「我々の抑止力強化の幅と深度は、米国の今後の北朝鮮に対する立場によって調整される」とも述べ、米朝協議の可能性を全く排除しているわけではない。その意味では、北朝鮮が直ちに核実験やICBM(大陸間弾道ミサイル)の実験を再開することは無いのではないか。おそらく先ずは北朝鮮の核開発の当面の最優先課題と見られる、ICBMの大気圏再突入時の安全性の確立等の実験を行うものと思われる。
遠からず発表するという北朝鮮の新たな戦略兵器が何なのかは分からない。また、発表がいつになるかもわからない。北朝鮮は米国に対する圧力として発表するのであろうが、それによって米国の政策が変わるとは思えない。 要するに、米国と北朝鮮の核をめぐる膠着状態は当分続くと見ていいのではないか。 その間、日米両国をはじめ国際社会は、北朝鮮に対して引き続き監視や圧力を強化すべきだろう。
日本への中距離ミサイルの配備は、日本にとって重要な課題となる。まず、配備されたミサイルを米軍が管理するのか、日本が管理するのかの問題が考えられる。日本の管理下に置かれる場合には、防衛のために攻撃することも専守防衛に入るという解釈を打ち出すことが求められ、国会等での議論がなされることが予想される。
もう1つ、人権は、北朝鮮に対する圧力の有力な手段となり得る。北朝鮮の自国民への扱いの他、日本の拉致問題も重要な人権問題である。米国人オットー・ワームビアさんの事件も忘れずに、米国はもとより国際社会に訴え、何十年も解決できないでいる拉致問題への解決に向けても、粘り強く北朝鮮と交渉すべきであろう。
日本の対北朝鮮外交の基本は、「核、ミサイル、拉致」の包括的解決である。米国議会では、北朝鮮核制裁法を最近成立させたり、以前から米国内の北朝鮮の資産を凍結したりする等の制裁措置を講じているが、日本も拉致問題を含む対北朝鮮問題の包括的解決のために、何らかの具体的措置を講じる必要があろう。国会においてもより積極的かつ建設的議論が求められよう。
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