ネズミ講に早く参加した人ほど得をする仕組み
2009年に厚生労働省から公表された財政検証に、厚生年金の世代別の負担給付比率が載っている(表1)。この数値が1を上回る限りにおいては給付額が負担額を上回っている。
また、表1には(a)欄、(b)欄2つの数値があるが、(a)欄のものは厚労省のものであり、(b)欄は(a)欄の数値をもとに筆者が計算したものである。
両者の相違は、(a)欄は実際には保険料負担のうち雇用主負担分を除いて試算されているいわば上げ底されたものであるのに対して、(b)欄は雇用主負担分を含めたより正確なものだ。いずれにしても、若い世代でも支払った保険料以上の年金給付が受けられ、先行きも明るいように見えるが、もっとも重要なのは年齢が高いほど年金の収益率が高いことである。
要は、早くにネズミ講に参加した世代ほど得をし、後から入った世代ほどうまみが少ないということだ。厚生労働省公認の公的年金における世代間格差である。しかも、世代間の扶け合いにしては、世代間の格差が大きすぎるだろう。生まれた年代が違うだけ国が国民をこれほどまで差別的に扱ってもよいのか。憲法が保障する法の下の平等に反するのではないだろうか。
「払った以上に貰えます」は本当か?
しかし、学習院大学の鈴木亘教授が内閣府経済社会総合研究所で行った研究結果はより衝撃的である。1955年生まれ世代以降は全ての世代で保険料負担が受給額を上回る、いわば払い損となっている。この試算を前提とするならば、わが国の公的年金はすでに実質的に破綻していると言えるだろう。
それにも関わらず、若い世代は「払った以上に貰えます」という厚労省の言葉に不審を抱きつつも、強制的に加入させられ続けているのだ。しかも、厚労省によると、公的年金の運用利回りは4.1%と相場より高めに想定されてもいる。これは正しく詐欺行為に他ならない。
国家による詐欺行為も許されないはず
これまでの説明から、AIJ投資顧問と厚生労働省の公的年金制度は本質的に同じ原理で運営されており、結局は、ネズミ講となんら変わるところがないことがご理解頂けるだろう。
今回のAIJの事件を受けて、厚生労働省は厚生年金基金等の資産運用規制等の在り方を検討し、規制強化に乗り出す構えを見せているが、そもそも自らが運営する年金が現状のまま推移すればいつかは破たんすることが明らかなネズミ講であることを棚に上げて、年金事業を守る正義の味方であるかのように振舞うのはいかがなものだろう。
民間による詐欺行為が許されないのが当然であるならば、国家による詐欺行為も許されないはずだ。