スペースXそのものは非上場企業としては最も価値の高い企業とも言われているが、イーロン・マスク氏は「人々が火星に行き来できるようになるまで会社を上場するつもりはない」と常々語っている。スペースXに興味を持つ投資家にとって、スターリンク事業が上場され株式を所有できることは歓迎すべきことと捉えられている。
衛星によるインターネットサービスは、アマゾンのジェフ・ベゾズ氏、ヴァージン・グループのリチャード・ブロンソン氏など、複数が参入し次世代グローバルインターネットサービスの主流になる勢いで広がりを見せている。
ただし米国で2020年1月現在、衛星インターネットを提供しているプロバイダーは2社に限られている。一時は5社あったが、買収やサービス終了などにより2社に集約された形だ。思うようにビジネス展開が進まないのは、やはり他の大手インターネットプロバイダーと比較して料金が高めであるため。米国では地上のサービスが利用できない地域など、限られた市場でのみ利用されているのが現状だ。
それでも、スターリンクが夏に参入すれば、価格が大幅に下がる可能性もある。スターリンク担当者は「今年の終わりに衛星がグローバルのインターネットをカバーできるようになれば、現在人々がプロバイダーに支払っている価格よりも安く、かつ5~10倍の速度を提供できるようになる」としている。
つまりスペースXはロケット打ち上げを他社に提供する、インターネットプロバイダー、という2つの事業を新たに展開し、さらにインターネット事業を独立上場させる、という動きにより、まさに宇宙空間におけるマルチサービスプロバイダーに発展する可能性がある。
ジェフ・ベゾズ氏はどう対応していくのかにも注目
これに対し、長年マスク氏のライバルであり、犬猿の仲である、とも噂されるジェフ・ベゾズ氏はどう対応していくのかにも注目が集まっている。5G時代に突入し、より多くの人やビジネスに適正な価格でインターネットサービスを提供できるかが今後のカギとなることは間違いない。グローバルなサービス展開、ということは日本を始め他国のインターネットプロバイダーの市場にも食い込むことになるため、他国がどう対応するかも今後の注目を集めていくことになりそうだ。
▲「WEDGE Infinity」の新着記事などをお届けしています。