From LA

2019年1月30日

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(Tom Cross/Gettyimages)

 スペースXが突然全従業員6000人のおよそ1割に相当する577人の解雇を発表した。解雇者の中にはプロダクション・マネージャー、宇宙航空技術者、機械工、在庫管理者など様々な分野の従業員が含まれている。

 昨年には21ものロケット打ち上げに成功し、飛ぶ鳥を落とす勢い、と周囲から思われていたスペースXが、なぜ今大量のリストラを行うのか。CEOであるイーロン・マスク氏はこの件についてコメントしていないが、同社社長であるグイン・ショットウエル氏は「火星に宇宙飛行士を送る、というような大望を実現するために、会社をスリム化する必要がある」と語る。

 スペースXは1月11日に10個の通信衛星を打ち上げるためのファルコン9の打ち上げに成功したばかり。売上額は明らかにされていないが、NASAや米軍との契約により数十億ドル規模の収入があるとみられている。特に国際宇宙ステーションへの貨物や人を輸送するカプセル計画は26億ドルに達する支払いが行われる、と見られている。

 それがなぜ今大量のリストラを行うのか。ひとつ考えられるのは、昨年の21基というロケット打ち上げのペースが今年も維持できる保証がない、という点だ。一昨年の18基の打ち上げから増加した分、人手も必要だったが今年の先行きが不透明であり、月周遊旅行用のロケット開発にも巨額の資金がかかることから、まずは余分なコストをカットする、という見方だ。

 しかし一方でスペースXの経営は本当に大丈夫なのか、という懸念の声もある。スペースXに付帯する形で作られたトンネル会社、ボーリングは昨年12月に初のトンネルとそこへ昇降するための車用エレベーターをロサンゼルスで公開したが、当初のロサンゼルス西側、UCLA付近と空港を結ぶトンネル計画は通過地帯の住民の反対により頓挫。他の計画も順調に進んでいるとは言い難い。

 マスク氏はボーリング社のロゴがついた火炎放射器やTシャツ、キャップなどを売り出し、「資金の足しにしている」とジョークとも取れる発言を繰り返しているが、実際にそうしたグッズ販売に頼りたくなるほど台所事情は厳しいのではないか、と疑う声は以前からあった。スペースX本体の経営は企業や政府との契約のため一応安泰ではあるが、本来の業務を超えて月旅行や火星移住ロケットなどに資金を使っているため、全体として経営が苦しい、という見方だ。

 従業員にとっては寝耳に水のような解雇通告だったようで、ツイッターなどでは「ハードワークをこなしてきた人々にとって、あまりにも不公正なやり方だ」などの内部批判も見られる。会社側は最低でも8週間分の賃金保証、またロサンゼルス周辺での他の宇宙航空産業への再就職斡旋などを行う、としているが、納得できない従業員からは「自分のスキルセットがもう不必要になったから簡単に切り捨てられた」という恨み節も聞こえてくる。

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