世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年3月13日

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 北朝鮮は、暗号通貨奪取、制裁回避や技術入手のためにインターネットの使用を劇的に増大させている。マサチューセッツのデジタル安全グループRecorded Futureの調査によると、北朝鮮によるグローバル・インターネットの利用は過去3年の間に3倍に増加したという。北の指導部は暗号通貨を奪取し、資金を洗浄する近代的な手法を築き上げたようだ。これは銀行取引の追跡や石油等の取引規制等を使って、ならず者国家を抑えようとしてきた制裁の効果を損なうことになっている。

ilkaydede/iStock / Getty Images Plus

 2月15日付けワシントン・ポスト紙社説‘The U.S. is still imposing 20th century-style sanctions on North Korea: That won’t work anymore’は、Recorded Futureの調査を紹介し、対北朝鮮制裁への意味合いを議論している。同社説は、北はオープンなインターネットを通じて暗号通貨の奪取や洗浄をしており、北の経済の孤立を図る「20世紀型」の制裁ではもはやうまく行かないと主張する。

 社説は北の資金蓄積のやり方について、次のようにレポートしている。「例えばハッキングによりSWIFTシステム等世界の金融ターミナルへのハッキングを通じてランサムウェア攻撃を仕掛ける。他には大規模な取引をしかけて暗号通貨を強奪することや世界の個人コンピューターをハイジャックして暗号通貨を採掘すること等悪質な手口をとってきた。その利益は複数の国を通じて送金、あるいは追跡を逃れるためにブロックチェイン・コインに換金する」。なお、このような活動は、昨年夏に安保理も確認している。

 他の国が北のやり方を模倣することは、容易に想像できる。既にイランが暗号通貨を使って資金を移動させているとの兆候があり、テロ集団はモネロなどの匿名コインを使って寄付を集めている。

 どう対処するのか。社説は、北のインターネットが経由する中国、ロシアやインドのインターネット支援者の規制につきこれらの国々の協力を得ることが必要だとする。インターネットは世界的なオープンネスを基礎とするものであるので、そもそも、それ自体を規制することはできないであろうが、中国など関係国との協力は正に不可欠になっていると考えられる。

 しかし、同時に、従来型(社説が言うところの「20世紀型」)の制裁の重要性は変わらない。貿易や銀行取引等従来型の制裁により北に圧力をかけることは引き続き重要な手段である。それゆえ、かかる制裁の順守の強化や新たな制裁の導入は今後ともに続けていくべきである。社説の問題提起については、「20世紀型の制裁だけではうまく行かない」と理解すべきだろう。

 世界の経済、通信、技術などグローバリゼーションの波は従来のような敵、味方の区別さえ曖昧にさせている。驚くべきことであるが、テロ集団や「ならず者国家」もグローバリゼーションの世界に生きている。

  
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