世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年3月2日

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 2018年6月12日に、歴史的な米朝首脳会談がシンガポールで開催され、その後も2019年2月にはベトナムのハノイ、同年6月には板門店で、トランプ大統領と金正恩労働党委員長は、互いに握手を交わした。北朝鮮の非核化が主な議題であったが、その後も、北朝鮮はミサイル実験を再開し、国連の制裁を逃れながら、独自の道を進んでいるようにみえる。

SOPA Images / LightRocket

 では、最近の北朝鮮はどうなっているのか。関連主要動向は、次の通りである。

 (1)米朝交渉は膠着が続いている。2月10日のCNNは、トランプ大統領が側近に「11月の大統領選挙まで金正恩との首脳会談は望んでいない」と明かしたと報じた。オブライエン(安全保障担当補佐官)も同日「新たな首脳会談が適切かどうかは見守らねばならない」と述べたという。当面特別のことがない限り、大統領選挙が終わるまでは北朝鮮と交渉する意思が弱まっていることは事実であろう。後は北朝鮮がどう出るかということになるが、金正恩も体制危機にもなり得る中国の新コロナウイルスへの対応を優先しているようなので、下手に動くことはできないのではないか。他方、衛星写真によると寧辺や山陰洞に不審な動きがあると伝えられるので、注意を要する。

 (2)米国の北朝鮮チームも大きく変わっている。ビーガン北朝鮮特別代表が当面国務省副長官を兼任、国務省のランバート対北朝鮮特使も国連の多国間連帯特使に、ウォン国務次官補代理(北朝鮮担当特別副代表)が国連次席大使に転出と今本格的交渉ができる体制にはないようだ。北朝鮮でも軍人出身の李善権前祖国平和統一委員会委員長が外相に任命されたことが確認された。

 (3)「建軍節」の2月8日、労働新聞社説には核やミサイルなど戦略兵器の強化などに関する言及はなかった。また昨年と同じくパレードなどの大規模なイベントもなかったようだ。

 (4)北朝鮮は目下新コロナウイルスへの防衛を最優先している。体制維持のために危機感を持っているだろう。中国との貿易、交通を遮断、外国人の入国を禁止している。報道による限り感染が起きているとの情報はない。他方、北朝鮮が国境を接する遼寧省と吉林省では少なくとも150人の感染が確認されている。

 (5)南北関係推進に執心する文在寅大統領の北朝鮮への個人観光訪問解禁構想も、新コロナウイルス問題の影響を受け、今のところ不発に終わっている。韓国もこれから4月の選挙に向けて政治の季節に入る。

 そんな中、米国では、2月9日に発表されたレコーディド・フューチャ(Recorded Future)の報告書が注目を浴びた。例えば、2月9日付のニューヨーク・タイムズ紙のデイヴィッド・サンガ―記者の記事は、同報告書を取り上げ、北朝鮮のインターネット使用が 2017 年以降 3倍に急増し、それが制裁逃れやサイバー犯罪に使われていると指摘した。

 同記事が紹介する報告書の内容を読むと、北朝鮮のIT能力の進展やそのレジリアンスに驚かされる。更に、中国やインドにいる留学生のネットワークを通じて、核やミサイル技術を習得している状況も明らかになっているという。西側諸国は、これらの状況に個々に、また協力して、対処能力を高めていくことが一層重要ということだろう。留学生の在り方についても、種々の困難はあろうが、適切な対応を避けて通れない時代になっている。米国では、中国の留学生等への対応の必要性が指摘されているが、適正な範囲内での規制は、国家安全保障の観点から止むを得ないのであろう。

 今後、日本も適切な対応をとっていくことが重要であろう。「ならず者国家」への対応能力の向上、ネットインフラの強靭化、大学教育など人材育成のための長期的計画、米欧などとの協力などハード、ソフト両面からの対応が必要である。

  
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