―さきほどロンドン大会(2012)から学んだとありましたが、東京大会の独自性というのはどういった点にあるのでしょう。
準備の発足段階からオリンピック、パラリンピックを同じ視点で計画し、準備して、実行に移してきました。それは初めてのことです。初期段階からアスリート委員会を設置して様々なサービスレベルに落とし込む工夫をしてきましたし、機運醸成にも取り組んできたことも大きなポイントかと思っています。
あとは組織委員会がダイバーシティ&インクルージョンという視点を意識的に取り入れていることです。
一つの例ですが、ボランティアの募集においても、障害を持った方たちがボランティアにいることを前提に、むしろ、入ってほしいと募集や研修計画を考えました。障害のある方たちがいるのが当たり前という考えです。
さらに組織委員会の職員にも障害のある方を積極的に雇用するよう行ってきました。
―どういった障害の方たちが参加されているのですか。
車椅子、聴覚障害、視覚障害など様々な方たちが入っています。
みなさん研修を受けて準備をしているところです。障害者のボランティアというのはロンドンでもおりましたが、視覚障害のボランティアは今回が初めてのはずです。これは難しいチャレンジなのですが、我々はそういったところにも取り組んでいます。
ボランティアは常にチームで行うものですから、チームに適したガイドをつけるようにするなど、それぞれのボランティアに合うよう様々な配慮をしながら準備を進めています。
また、ライセンシンググッズにはD&I(Diversity&Inclusion)シリーズというのがあって、障害のある方たちにもわかる工夫をされています。ピクトグラムも触ってわかるようにしてあります。
キャラクターのソメイティーを決めたときは各学級に一票というかたちで投票してもらって選びましたが、盲学校の子どもたちには3Dのものをプリンターで作って触って選んでもらいました。
また、D&Iだからといって、必ずしも障害者向けというものではありません。女子高生からカワイイと人気のあるグッズもあります。
こうしたものはロンドンやリオではなかったことです。これも東京の取り組みです。
東京大会は誰一人取り残さないという視点で準備に取り組んできましたし、SDGsに繋がる大会の計画、準備を進めてきました。ここが2020東京の大きなポイントかなと思っています。
―日本選手団の金メダル獲得目標を20と発表されましたが、競技力の向上の先にあるものとはなんでしょう。
我々はメダルを取りに行くのではなく、メダリストになれる選手であり、メダリストにふさわしい選手を育成していくことが本来の取り組みです。
メダルはあくまでもメダルという物ですから、ただ飾っておくだけではそれ自体が何かを語ってくれるわけでもなくメッセージ性もありません。
それよりも選手たちの一瞬のプレーの輝きに心打たれるものがあるはずです。そこに次世代の選手たちがインスパイアされるのだと思います。
選手団として目指しているのは自国開催という一生に一度のチャンスを現役で迎えられる彼ら、またコーチやスタッフを含めた関係者にとって、後悔なく自分たちが練習してきたことをすべて出し切ったという満足感を得られるような環境を整えることにあります。
それを「最高のパフォーマンスの発揮」と言っているのですが、それを出し切った結果がメダルだと思っているんです。
最高のパフォーマンスを発揮しなくて金メダルが取れるとは思えません。
なので、我々が日本選手権団として目指すべきは、メダルを取ることではなく、そのパフォーマンスを向上させること、ベストの状態を作っていくってことだと考えています。
―河合委員長、本日はお時間をいただき誠にありがとうございました。
パラリンピック日本選手団の活躍を祈念しております。
【追記~取材を終えて】
―準備が着々を進められるなか新型コロナウイルスという不測の事態が起こりました。今後感染が拡大すれば中止ということにもなりかねませんね。
我々は専門家ではありませんからこれにはお答えすることができません。
それにオリンピック・パラリンピックの開催の判断はIOCやIPC、それに組織委員会でしょう。我々は自国開催のパラリンピック委員会ではありますが、あくまでも参加する側の立場です。今はしっかりとした準備を進めるだけです。
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