2024年4月26日(金)

シルバー民主主義に泣く若者

2012年5月16日

図3 年金の給付水準についても、世代によって考え方の違いが明確に出る (出所:「公共支出の受益と国民負担に関する意識調査と計量分析」 独立行政法人経済産業研究所)
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 3つ目は、橘木俊詔・同志社大学教授が経済産業研究所の協力を得て2005年に行ったアンケート調査である。すなわち、年金の給付水準に関して「目標となる給付水準をある程度引き下げるのがよい」と回答した割合は、40歳代、50歳代でもっとも少なくなっている一方、「保険料負担が大きく上回ることもやむを得ない」と回答した割合は40歳代以上で大幅に上昇している(図3)。

 橘木教授等は「年金を受け取る年齢に近いと、給付水準の引き下げには賛同しづらいことを表しているのだろう」と解釈している。さらに、年金保険料負担に対する考え方に関して、20歳から40歳代までの世代では「保険料負担はすべて税負担と同じである」「返ってこない分は税負担と同じである」と回答した人の割合は7割を超える一方、「保険料負担は老後保障の出費であり、税負担とは異なる」と回答したのは、50歳代で4割近く、60歳以上では過半数となっている。

世代間の利害調整できず
民主主義の「失敗」

 こうしたアンケート結果から窺えるように、現在社会保障給付を受けている高齢者やこれから受け取る高齢者予備軍は、他の世代に多くの負担を課してでも自らの老後の生活資金を確保する方が大切で、若者世代が望む子育て支援には冷淡な利己的な存在であるようだ。さらに、3つの調査の実施時期に関わらず、高齢世代の態度は一貫している。

 政治の本質は異なる主体の利害調整を行うことにあるが、少子化・高齢化の進行下においては、世代間の利害調整という点で民主主義は失敗している。

 先にも見たように、現在進行中の日本の少子化・高齢化は、政治的な決定権を、民主主義が伝統的に重んじてきた納税者=現役世代から、主に社会保障給付などの受益を享受するだけの高齢者=引退世代にバトンタッチさせてしまうため、現在顔を覗かせつつあるシルバー民主主義は、遅くとも2050年までには、全盛期を迎える。

 次回は、こうした牙を見せ始めたシルバー民主主義の暴走を未然に防ぐための手立てについて考えてみたい。

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