使えない上司・使えない部下

2020年3月25日

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 今回は、特定社会保険労務士の長沢有紀さん(アドバンス社会保険労務士法人代表社員)を取材した。1992年、23歳で社労士試験に合格し、25歳で開業する。当時は、独立開業をする女性の社会保険労務士が少なかった。パイオニア的な存在として、人事労務の専門家や経営者の経験、実績を積んできた。

 現在、アドバンス社会保険労務士法人(埼玉県所沢市)の職員は8人。埼玉や都内を拠点に多数の会社の労務相談や人事制度設計、就業規則の作成、改訂のほか、人事労務に関する書類の手続きや給与計算をする。

 社会保険労務士は、社会保険労務士法に基づいた国家資格者。企業や団体の社員、職員の採用から退職までの労働・社会保険に関する諸問題や年金、労務の相談をはじめ、業務の内容は広範囲にわたる。2018年の時点で、登録した社会保険労務士は全国で約4万7180人。うち、開業は約2万6272人、会社などに勤務する者は約1万5508人。社会保険労務士法人会員は1587法人。

 長沢さんにとって「使えない上司・部下」とは…。

(Irina_Strelnikova/gettyimages)

「上司をはじめ、周囲に気を使える社員」

 「使えない」といった言葉は、労務相談を受ける会社の社長や役員、総務から時々、聞きます。私は社会保険労務士法人を経営する立場として職員(社員)を雇っていますから、職場で口にすることはありません。それでも、言いたくなる気持ちは多少わかるつもりです。

 中小企業の一部の経営者から、「うちの会社に仕えない社員がいて、困っている。辞めさせたい」といった意味合いの相談を受ける場合があります。お話を伺う限りでは、その社員がほかの方と比べて仕事ができないようなのです。私は状況を正確に判断できるだけのお話を聞いているわけではありませんから、お聞きすることがあります。すると、「使えない」という意味が「仕事ができない(能力がない)」ではなく、「気を使えない」「空気が読めない」みたいな使い方が多いのに驚かされます。

 「使えない」の意味を私なりに考えてみると、主に2つあるように思います。1つは、「仕事ができない」。もう1つは、「気を使えない」。協調性がない、あるいは空気を読むことができない、と置き換えてもよいのではないでしょうか。一方で、「使える」と見られ、高く評価される人は「上司をはじめ、周囲に気を使える社員」だと思います。

 最近は人事評価で成果や実績を重んじる傾向がありますが、今も昔も協調性が求められるのは変わっていないように見えます。会社員の場合、その場にふさわしい言動をとり、周囲にきちんと配慮できる人が高いレベルの成果や実績を残すことができると考えています。

 私は「使える」といった言葉は使いませんが、仕事の返事が速い人を高く評価することが多いですね。たとえば、弊社のホームページの制作を請け負う会社(社員数10人程)に依頼すると、メールにしろ、電話にしろ、とにかく回答が速い。そして、私たちの求めていることをあらかじめ察して、先回りをして丁寧に細かな対応をしてくれます。仮に作業が少し遅れる場合にも、「〇日までお待ちください」と早いうちに連絡が来ます。こちらからすると、メドが立つので大いに助かります。

 この会社に限らず、「使える」人は得てして自分の立場をわきまえているように思えるのです。場を読んでいる、とも言えるのかもしれません。この場合の「わきまえる」とは、おとなしくなり、相手の言いなりになるのではありません。自らの役割を心得て、それをきちんとやりとりとげることを意味しています。こちらが依頼した仕事の仕上がりがほかの社員が1.0の時に、1.2にしてくれるならば、なおありがたいですね。 

 ここ数年は、状況が多少変わりつつあります。人手不足が深刻になっているためです。私が知る中小企業の社長たちは社員が立場をわきまえない言動をとっていても、それを指摘し、指導することにためらいを感じる場合があるようです。辞められると、代わりの人がいないだけに困るからでしょうね。

 確かに人手不足は深刻ではあるのですが、社外のアウトソーシング先や弊社で雇う社員ともに、仕事をするうえでの立場をわきまえ、柔軟に対応することは必要だと思います。たとえば、「自分の考えが常に正しく、相手が常に悪い」といった姿勢では、安心して仕事を任せることができないのです。

 社長や役員の方から労務相談を受けると、「ある社員が自分の考えを変えようとしないから困っている」と聞く場合も少なくありません。柔軟さが欠けている人が多数いる会社は、生き残れないでしょうね。さらに、こういう社員は相手に対しての言葉にキツイ印象があります。これがますます、柔軟さがないように思われる場合があるのです。

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