2022年12月10日(土)

使えない上司・使えない部下

2020年3月25日

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社員を信用して、仕事を任せることができるか否か

長沢有紀さん

 私も、その意味の柔軟さがあまりなかった時期がありました。たとえば、20代に金融機関に勤務している頃です。「自分の考えが正しい」と信じ込んでいたから、上司から注意指導を受けると、いい気はしませんでした。その後、社会保険労務士法人を経営する立場になると、自分が苦しいと感じる機会が増えてきました。仕事でも経営でも、私生活でも…。私がこれほどにがんばっているのに、なぜわかってくれないの?といった思いが強くなり、イライラする日が増えてきたのです。

 私は、社員に怒ることがほとんどありません。強く言えないのです。言わない、というよりは言えない。性格によるものなのでしょうね。本当は言いたい時もあるのですが、言えない。だから、一層に苦しいと感じていたのだと思います。注意もできないくらいだったのです。最近は、注意指導はするようにはしています。

 苦しかった時期から、コーチングの先生に何年もレッスンを受けてきました。その場で「私の考えのどこがいけないのですか?」「間違ったことを、私は言っている?」などと、何度も尋ねてきました。しだいに、自分の考えを変えるようになってきたように思います。

 たとえば、意見や考えが異なる人と仕事をする時でも、「ああ、こういう考え方もあるのだな」と言い聞かせ、受け止めるようになりました。今でも、繰り返し言い聞かせるようにしています。様々な意味で隔たりが大きい場合でも、言い争うことなく、“負けるが勝ち”と引き下がるようにもなりました。自分が正しかったとしても、負けたとは思わないような心の余裕が多少なりともできたのかもしれませんね。

 働き方改革に取り組む会社が増えていますが、弊社も残業削減や有休休暇の消化には力を入れてきました。現在、月の残業時間はゼロになりつつあります。職員たちにはできるだけ長く働いてほしい、と思っています。そのために、10年以上前から組織づくりをしてきました。組織づくりは、弊社のような小さな会社ではすぐにはできません。少なくとも3∼5年が必要だと思います。

 その場合、問題になるのは社長や役員、管理職などが個々の社員を信用して、仕事を任せることができるか否か、です。小さな会社の特に創業経営者には、社員に仕事を任せることがなかなかできない方がいます。あらゆる仕事が社長に集中するようになっている場合もあります。打ち合わせや休日にも、社員から頻繁に電話が入るそうです。社員たちは、自分で意思決定をすることができないからかもしれませんね。

 このような状況では社員が育たないし、仕事がおもしろく感じないのではないかな、と私は思ってきました。職員たちには可能な限り、権限を委譲し、仕事を依頼しています。1人が退職したとしても、ほかの職員がすぐにフォローできる仕組みをつくってきました。この仕組みで残業時間削減や有休休暇消化促進ができるようになったのだと思います。今では、私よりも仕事のレベルが高い職員がそろっています。

 仕事を社員に任せることができない社長や役員、管理職は「どうせ、(部下は)できない」と思い込んでいるのか、完ぺきなものを強く求めすぎているように私は思います。今は、「使えないから切る(労働契約を解除する)」といった時代ではありません。使えるようにしていくしかないのです。

アドバンス社会保険労務士法人

  
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