世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年4月8日

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 リビアではハフタルの率いるリビア国民軍(LNA)と国際的に承認されている国民合意政府(GNA)が対決し、アラブ首長国連邦(UAE)がLNAを、トルコがGNAを支援するという構図になっているが、本年に入り、UAE,トルコともにそれぞれの支援を強化している。UAEは1月中旬以降、貨物機100機以上を飛ばし軍事物資を運んだと見られ、同時にリビア内の要員を増加していると伝えられている。他方、トルコは1,2月に3,500トンの装備と弾薬を貨物船で3回リビアに運んだとのことである。そのほか、トルコの支援を受けた4,000人のイスラム戦士のシリア人傭兵がトリポリと周辺に到着したと報じられている。

Allexxandar/iStock / Getty Images Plus

 こうした展開は、UAEがLNAの支援を、トルコがGNAの支援をそれぞれ強化し、更にはUAEとトルコがより直接的に軍事介入に乗り出したことを示唆していると言えよう。このような状況は双方が決戦に備えているものとしか考えられず、新たな衝突の危険が高まっており、過去最悪の戦闘が行われる恐れがある。その間にあってロシアがどう出るかが注目される。ロシアは2019年9月数百人の傭兵でLNAを支援したが、ロシアがどこまで本気でLNAを支援する気かは明らかでない。ロシアはリビアから欧州を完全に追い出すことに関心を持っていると考えられ、そのためにトルコと協力するかもしれない。このような不確定要素もあるが、新たな衝突が起きてもどちらかが絶対的勝利をおさめそうにない。リビア情勢の混乱は続くと見るべきだろう。

 リビアの混迷が続く背景には欧米の関心の低さがある。欧米はカダフィ打倒では積極的役割を果たしたが、その後のリビア情勢には積極的に関与していない。ドイツはこの1月ベルリンでリビア和平会議を主催し、独仏やロシア、トルコなどの関係国の首脳が本格的な停戦を実現するための共同声明を発表した。メルケル首相は記者会見で、停戦監視の仕組み作りや武器禁輸の強化などを進めていく考えを強調した。

 しかし和平の具体化のため2月にジュネーブで開催された会合では進展が見られず、メルケルもベルリン会議に出席したマクロン首相も、和平の進展のためのフォローアップに関心を示していない。米国に至ってはベルリン会議にトランプ大統領が出席せず、代わりにポンペオ国務長官を送ったにとどめ、米国は公式にはGNAを支持していながらトランプが一時ハフタル支持を表明するなどしており、とても真剣にリビア情勢に取り組む姿勢を示しているとは思えない。こうした米国の地域への明らかな無関心が、リビア内戦のアクターのいくつかを強気にさせ、内戦の泥沼化の一因となっているのは間違いないであろう。もっとも米国はイラクなどで戦闘後の国つくりに関与して苦い経験をしており、リビア情勢の安定化に深入りしないのは、あるいは賢明なことなのかもしれない。

  
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