世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2020年4月27日

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 トランプ米大統領は、かねてよりWHOは過度に中国寄りであると非難してきたが、4月14日、WHOへの資金拠出を停止するよう指示したと表明した。トランプは、WHOは新型コロナウイルス対策において基本的な義務を果たしていない、と批判している。

Rawf8/iStock / Getty Images Plus

 この問題についてフィナンシャル・タイムズ紙の4月16日付け社説‘The WHO should be bolstered, not crippled’は、「WHOは機能不全にされるべきではなく、強化されるべきである。 WHOへの米の資金供与の停止は大変無責任である」と、米国による資金拠出の停止を批判している。社説の要点は次の通りである。

・新型コロナという世界的保健緊急事態の最中に WHOへの資金を切ることは大変無責任である。

・トランプ政権は無茶な行動をしているが、それはWHOのコロナウイルス対応が非難に値しないことを意味しない。 1月にはWHOは、新型コロナウイルスのヒト-ヒト感染の証拠はない、とツイートした。湖北省にオブザーバーを送りたいとの WHO自身の要求を当初拒否したにもかかわらず、テドロス事務局長は中国の対応を称賛した。

・今トランプが WHOを攻撃しているのは、彼自身の新型コロナへの弱い対応から注意をそらす努力のように見える。

・他の国連機関同様、WHOもその加盟国の支持と協力を必要とする。テドロスの中国称賛は、今となってはよくなかったように見えるが、 WHOが中国の協力を必要としたことを考えると、理解できる間違いであった。

・本当の問題は中国政府であり、WHOではない。武漢での出来事について中国は当初オープンでないという失策を犯した。

・秘密主義の中国がWHOで過剰な影響力を行使しているとしても、それへの答えは米国がWHOから撤退することではない。米、欧など西側諸国にとっての真の解決策はWHOを改善するために共に働くことである。今はWHOにはその仕事をさせる必要がある。米の資金を切るとの脅しは撤回されなければならない。

 この社説は、基本的には常識的な正論を述べている。しかし、WHOのテドロス事務局長の中国寄りの姿勢に対し、国連機関は加盟国に気を使う必要があるとして、それを許容するような部分については、賛成できない。特定の加盟国に気を使うのではなく、国際機関としての中立性を大事にすべきである。

 また、WHOのような機関は医学的、技術的な見識で起こっていることに対処すべきであり、下手な政治的考慮は排するべきであろう。テドロスはトランプの対応をコロナウイルス問題の政治化と非難しているが、中国に気を使って、台湾締め出しに協力している。これこそWHOの仕事の政治化以外の何物でもない。

 WHOは重要な機関であり、その改善に取り組んでいくことが大事であるとのこの社説の主張には賛成である。国連の専門機関に中国はどんどん進出してきている。 中国はまだ、自国の利益を離れて中立的な国際公務員としての役割を果たす人を専門機関の長にするというより、中国の利益を増進することを狙っているように思える。テドロスのように中国に気を使う人や、中国人自身の専門機関の事務局長への就任には、我が国を含む西側諸国がもっと注意を払っていく必要がある。

 トランプは、議会の承認なしにWHO拠出金支払いをずっと停止し続けることはできない。また、新型コロナウイルス問題には、約40億ドルのWHO予算の約15%が今割り当てられており、トランプの資金提供停止が新型コロナウイルスに対するWHO活動に直ぐ影響を与えるとは見られていない。なお、4月16日、共和党議員団は、WHOの役割を評価しつつ、テドロスの辞任を拠出金支払いの条件にすべしと、トランプに提言している。

  
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