民主党大統領候補、バーニー・サンダース氏が選挙戦からの撤退を表明した。同氏の選挙参謀らからも早期撤退の要請があった、と伝えられる。その理由は「民主党本部と対決姿勢を強めるよりも、ここで撤退して新しい政権に自分の政策を少しでも反映させる方が利益が大きい」ためだという。
正式に民主党候補になることがほぼ確定したジョー・バイデン氏もサンダース支持者に自分に投票するよう呼びかけている。ただしサンダース支持者の15%は「イラク戦争に賛成票を投じ、女性スキャンダル、息子のロシア疑惑などがあるバイデン氏に投票するくらいならトランプ氏に投票する」と頑なな姿勢だ。
一方、相手がやや苦手とするバイデン氏になったことで、トランプ大統領の動きも目立ってきた。その中で最大のブラフとも取れるのがWHOのテドロフ事務局長への攻撃だ。4月7日に行った新型コロナウィルスについての記者会見で、大統領は「WHOに対する拠出金を一時保留することも考えている」と強い発言を行った。
理由としてWHOが十分な情報を世界に与えず、中国よりの姿勢を崩していないこと、台湾政府が早い段階で「ウィルスは人から人に感染する可能性がある」と警鐘を鳴らしていたのに、WHOは「人・人感染の可能性は低い」としていたこと、パンデミック宣言が遅れたことなどで「世界中に感染が広がるのを、中国への過剰な配慮から防止する義務を怠った」ためだという。
WHOの予算はおよそ60億ドルで、米国はこのうち5億5300万ドルを負担している。大統領はその後「一時保留を考えている、と言っただけで実際にする、とは言っていない」とややトーンダウンしたものの、国内では「自らのウィルス対策の失策への非難の矛先をWHOにすり替えている」という批判が起きている。
「過去3カ月、台湾から個人攻撃を受けている」
ただし今回のトランプ発言は正しい一面もある。WHOが開催したブリーフィングで台湾の代表が行った質問が無視されたり、テドロフ局長が「過去3カ月、台湾から個人攻撃を受けている」と突然語ったり、とWHOの姿勢そのものへの疑問の声もある。「中国はよく頑張っている」と中国を称える発言など、局長が中国よりの人物と言われても仕方のない面があるのも確かだ。
一方でトランプ大統領も「ウィルス騒動は4月までには終わる」と根拠のない楽観論を展開し、対策が遅れたためにニューヨークの感染爆発を招き、今や世界一の感染国にしてしまった、という負い目は否定できない。最近も「イースター開け(4月14日)には経済を再開する」と豪語していたが、国中が少なくとも4月いっぱいは自粛を続けることを表明しており、経済優先よりも人命を、と相手にされていない。
ただし、こうした失策があっても、トランプ大統領の支持率はじわじわと上がっている。最新の世論調査(4月10日付、フォックスニュース)ではバイデン対トランプの支持率は42対42と拮抗。9日以前はバイデン氏リードが多いが、それでも差は3~11%程度で、大差でバイデン氏、というわけでもない。
理由として考えられるのは、毎日のように記者会見を行いテレビに登場するトランプ大統領に比べ、ウィルス騒ぎの影響でバイデン氏には一般に呼びかけるチャンスが少ない。人はどうしても毎日見る人を信頼し、その言葉に耳を傾ける傾向がある。