米カリフォルニア州の新型コロナウィルス感染者は4月6日現在で1万5450人、死者は累計で372人。このうちロサンゼルス市周辺が6377人と最大で、死者もこの地域だけで147人となっている。
カリフォルニア州では3月19日に外出禁止令が発動され、2週間近くがたつ。市民は概ねこれに従っているが、感染者の拡大は今のところ防げていない。一方で自宅待機や一時解雇が増え、「このままでは家賃が支払えない」と訴える人も増加している。
例えばジムのインストラクターの女性の場合、ジムが閉鎖になり収入が途絶えた。どうしても4月分の家賃が支払えず、アパートの管理会社に連絡したものの、はっきりとした返答が得られない、という。同州のニューソム知事は「5月31日まで、家賃が支払えない人の強制退去を禁じる」という条例は発動したものの、「今後1年間をかけて家賃は支払う必要がある」としている。住宅ローンも同じで、未払いのためのフォークロージャー(競売措置)は5月31日まで据え置く、としているものの、その先の保証はない。
一方で外出禁止令は5月末以降も続く可能性がある。知事はすでに公立学校について6月の今学期終了までの閉鎖を打ち出しており、他の多くのビジネスも同様に再開の目処が立たない可能性がある。4月分の家賃や住宅ローンが支払えない人が、5月や6月分を支払うのはほぼ不可能だろう。連邦政府は年収7万5000ドル以下の人には一律1200ドルを支給する、としているが高いこの地域の家賃を考えると焼け石に水だ。
また自営業者など小口ビジネスに対し、州は1万ドルの無利子ローンを検討中というが、これもローンであり支給ではない。とりあえず糊口をしのいでも、借金だけが嵩むという結果も考えられる。
ただし大家側の事情もある。例えば高齢者が施設に移り住むにあたり、それまで住んでいた家を賃貸に出して施設の費用を払っている、といったケースの場合、家賃の支払いを猶予すれば今度は大家側の生活を逼迫することになる。どちらに転んでも経済が圧迫されていることだけは確かだ。
ホームレスへの感染拡大を防ぐためにホテルを借り上げ
その上、ロサンゼルス周辺にいる5万人とも言われるホームレス問題。ロサンゼルスのガルセッティ市長は「ホームレス間の感染拡大を防止するため、ホテルを借り上げる」と表明した。しかし現時点で市が用意できた部屋は7000室だという。このほかキャンピングカーを利用したホームレスのための仮住居なども進められているが、5万人を収容できるだけの施設を維持するのは不可能に近い。
感染爆発と医療崩壊に備え、広大な面積を誇るロサンゼルスコンベンションセンターは現在州兵の手によって臨時の医療施設への転換が進められている。これは軽症者などを隔離するための施設で、人工呼吸器が必要となるような重症者のために病院の病床を確保するのが目的だ。ロサンゼルス港にはウィルス感染者以外の重病者を搬入するための病院船も着岸しているが、まだ実際には稼働していない。
こんな状況の中で、家賃を支払えないがために家を失う人が大量に出ればどのような事態が起こり得るのか。家を失ったからといってすぐに人々がホームレスになるわけではない。まず親戚、知人などに助けを求め、短期間の滞在を申し出る。しかし感染が拡大し続ければ、これを断られるケースも増えるだろう。さらに家の中の人口密度が増えることで、感染が拡大する可能性もある。