コロナウィルスによる新型肺炎が全米を揺るがしている。特にニューヨークの感染者数は3月25日現在で2万人を突破、米国全体では4万人を超えた。全米では1億5000万人以上が外出禁止、自宅待機を求められている。
そんな中、予備選の中止や延期も相次ぎ、選挙戦は停滞モードに陥っている。民主党としては7月の党大会を待たず、バイデン元副大統領に一本化して対トランプの戦略を組みたいところだ。というのも対コロナウィルス対策で、このところトランプ大統領の支持率は上昇しており、就任以来久々の50%を超えた。
現時点でもしバイデン対トランプとなった場合、バイデン氏が勝つと予想されるが、その差はわずか3%。今後経済刺激策などでトランプ支持が上がれば、バイデン氏といえども危ないかもしれない。
こうした状況の中、民主党からの撤退圧力は高まっているが、バーニー・サンダース上院議員は「4月に候補者討論が実施されるのならば参加する」と発言、まだ選挙戦から撤退しない姿勢を明らかにした。
現時点でバイデン氏とサンダース氏の獲得代議員数の差は300、サンダース逆転のためには今後の予備選で6割以上の得票を得る必要がある。これは今のバイデン氏の勢いから考えるとほぼ不可能な数字だ。なぜ負け戦とわかっていながらサンダース氏は撤退しないのか。
その理由は、討論やオンライン集会を通じて自分の政策を少しでも国民に周知し、バイデン氏の今後の施政方針にも影響を及ぼすためだ、と言われる。78歳のサンダース氏にとって、今回がおそらく最後の選挙戦となる。その中で、少しでも民主党の姿勢を変えたい、自らの主張を今後の政治に取り入れたい、という願いがある、というのだ。
コロナ検査で3000ドル
特にコロナウィルスの新たな震源地となっている現在、国民皆保険制度だけはなんとしても通したい、というのがサンダース氏の根幹にある。米国ではオバマケアが実施されたにも関わらず、2018年の時点で保険未加入者は2750万人以上。こうした医療から取り残された人々がウィルスに感染した場合、医療を受けられない可能性がある。また保険を持っていいたとしても、自己負担額が相当な額となり、支払えない人も急増している。
例を挙げると、新型コロナウィルスの検査を受けた人が、3000ドル以上の医療費請求を受けたケースが報告されている。検査そのものは保険適用となるが、ウィルス検査以外の他の検査や診療費などの総額が請求対象となるためだ。もし保険がなければ請求額は数万ドルに及ぶ可能性がある。
このため新型肺炎の症状を自覚しても医療機関に相談しない人というのは一定数存在する。それが隠れた感染拡大の原因となる可能性は十分にある。さらに、所謂日銭労働を余儀なくされている人々にとって、1日でも仕事を休むことは死活問題だ。多少の熱があっても仕事に出かける人を止める手段はない(米国では外出禁止令などで多くの仕事が中断しているが、一方でデリバリー、スーパーなどの小売、農場では人手不足となり、多くの求人が行われている)。