コロナ危機初期対応の遅れに対する批判が高まる中、トランプ大統領はその打消しに躍起となっている。だが、自らがこれまで繰り返してきた脅威についての軽視発言、楽観論、虚言、事実誤認そして言い逃れの証拠は覆うべくもない。以下にその具体例を改めて時系列的にリストアップしてみた(米主要各紙および公共放送NPRの報道を参考)。
1月22日(米国での感染拡大について)
「われわれはすべてをコントロール下に置いている。感染者は中国からの帰国者たった1人だけだ。大丈夫だ、問題ない」
1月25日(ツイート発信)
「中国はコロナウイル封じ込めに真剣に取り組んでいる。われわれはその努力と透明性を大いに評価している。すべてうまくいくだろう。習近平国家主席に感謝したい」
1月30日
「わが国にはコロナウイルス感染者はたった5人だけであり、それも快方に向かっている。我々にとってハッピー・エンディングを迎えることになる」
(注:同日、世界保健機関(WHO)が「国際的公衆衛生非常事態」を発信)
2月7日
「何事もかんたんにはいかないが、習近平国家主席は(撲滅に)成功するだろう。とくに暖かい気候になれば、ウイルスも弱まり、やがて消滅してしまうことになる。彼は陣頭指揮をとり、非常に成功裏にコロナ封じ込め作戦に乗り出している。われわれは対中国支援に向け、緊密に協調している」
(注:8日、在中国米大使館が「武漢市で初の米国人感染死亡を確認」を公表)
2月10日
「春までには騒ぎは収まっている。4月にはウイルスは消滅している。わが方の対策はすべて良い方向にある」
(注:米疫病管理予防センター(CDC)はこの時点で「危機収拾は春以降、今年以降まで続く」と警告している)
2月14日
「現在、わが国の感染者はごく少数にとどまっている・・12人かそこらだ。かれらの多くが快方に向かっており、何人かはすでに回復している。我々は非常に良い状況にある」
2月19日
「すべてうまく行っている。4月になり、暖かくなれば、この種のウイルスはネガティブな影響を受ける。とにかく、コトは首尾よく進むだろう」
2月24日
「コロナウイルスはアメリカでは大いにコントロールできている。株価も非常に良い状況になってきた」
2月25日
「みんなコロナウイルスのことを気にしているだろうが、わが国ではとてもよくコントロールされている。感染者は少数に過ぎず、快方に向かっている……われわれの取り組みについて言えば、大いに立派な仕事をしている」
(注:同日、CDCが「カリフォルニア州で初の国内感染者を確認、米国内感染拡大の危険」に言及)
2月26日
「感染者は15人だが、減少しつつあり、数日中に、ゼロになるだろう。われわれが立派な仕事をしている証拠だ。死亡リスクもインフルエンザより少ない」
2月28日
「対策はうまく行っていると思う。われわれは世界の特定地域からの入国制限措置をとった。速やかな行動に出た。結果として正しい措置だった。現在の感染者も15人に過ぎず快方に向かっている。最悪事態にも備えているが、我々は非常に幸運だ」
(注:ワシントン州知事が初の感染死亡者が出たことを発表、同時に「州非常事態」宣言)
2月28日
「コロナウイルスは消滅しつつある。ある日、ミラクルのように消えていく」
(注:3月1日には、フロリダ州はじめケンタッキー、ニューヨーク、メリーランド、ユタ、オレゴン各州でも「非常事態」宣言)
3月5日
「世界中で感染者約10万人、死者3280人が出ているが、わが国はすみやかに国境を閉鎖したため、感染者はたった129人、死者11人だけだ」
3月6日
「昨日、テレビ中継の市民集会で言ったことだが、みんな平静を保ちなさい。ウイルスは消えていく」
3月9日
「フェイク・メディアとそのパートナーである民主党が、実際以上に危機をあおりたてようと躍起になっている。わが医務官も言っている通り、一般市民へのリスクは低い」
(注:WHOが11日「コロナウイルス・パンデミック」を宣言)
3月10日
「これは(コロナウイルス危機)予期できないものだった。しかし、わが方は準備万端、立派な仕事をしている。やがて消え去っていく。落ち着いていなさい」
3月11日
「コロナ感染は限られた地域のみであり、大多数の米国民にとってリスクは非常に低い」
3月12日
「私がそして政府が中国側と取り組んできた結果、現段階でのわが国での死者は32人だけだ。他の諸国から伝えられる死者の数字と比べれば、わが国の場合は驚くほど少ない」
3月16日(記者会見で全米向けに)
「若者そして健常者も含め全国民に勧告したい。外出を控え、テレワーク、テレ学習に切り替えるように。外での飲食も避け、10人以上の集会も自粛してもらいたい」
(大統領はコントロールしているといいながら、実際は感染者は拡大していることをどう思うか」との質問に対し)
「ウイルスについて言うならば、世界のどの国もコントロールできていない。自分が言ってきたのは、わが方の対応ぶりについてだ。ウイルスについてではない」
3月24日
「ウイルス感染で多くの人が死亡するかもしれないが、わが国を(ロックダウンによって)大規模不況に追い込んだ場合、それ以上の命が奪われることになる。来るべきイースター復活祭(4月12日)は自分にとってとても大切な日であり、それまでに外出禁止措置をやめ、経済活動を再開させたい」