Wedge REPORT

2020年5月11日

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 新型コロナウイルスによる感染拡大が進み、「医療崩壊」への懸念が取りざたされている。ただ、苦しいのは感染症対策の〝第一線〟だけでなく、国が推進している在宅、地域総合医療の現場もひっ迫し始めている。目下の懸念は感染症対策病院の機能維持だが、地域総合医療体制が充実しつつある地域でも診療に対する制約が垣間見える。

(Feverpitched / gettyimages)

 「総合診療・家庭医療学の第一人者」とも呼ばれる葛西龍樹主任教授が所属する福島県立医科大学。同大学附属病院とともに県内7つの総合病院や診療所と連携して、「プライマリ・ヘルス・ケアの専門医」とも呼ばれる総合診療医・家庭医の充実を図っている。

 「附属病院は現在、〝地域医療の最後の砦〟として、新型コロナウイルス対策が日夜繰り広げられている。新型コロナにり患したもしくはその疑いがある患者に対しては、通常より多くの医者やスタッフ、病院の設備とスペースを割かなければならない。そのため、その他の病気の人たちに対しては、比較的症状の軽い場合は受診を控えてもらったりして機能を集約する措置が取られている」。葛西氏は現状の医療体制を語る。

 同大学が連携する総合病院や診療所では、感染の疑いがある患者とそれ以外の患者の動線が絡まないようにゾーン分けが行われている。「建物に入る前に症状を記入してもらい、新型コロナが疑われれば患者に自身の車内で待機してもらって、個人用防護具を着た医師が駐車場へ行って車外から様子を見ながら詳しい問診を行い、その結果に応じて別々のゾーンで診療を進める」という。

 こうして新型コロナ対策に多くの医療資源(人員・時間・費用)を割く一方で、それ以外の病気で状態が安定している患者には総合診療医・家庭医は診療を極力電話やオンラインで対応し、処方箋を出すことにしている。「診られる範囲やできることは限られてしまう」と葛西氏は語る。ただ、「総合診療医・家庭医の強みは、継続して患者を診ていること。疾患だけでなく、家族や仕事といった生活全体の視点から問題に焦点を当てる。電話やオンライン越しでも患者の些細な変化も見逃さないよう安全に診療するためにこれまでの蓄積を駆使している」と話す。

 在宅医療の現場にも影響が及んでいる。千葉県南房総で地域医療を展開する亀田総合病院グループで在宅医療を担う亀田ファミリークリニック館山の岩間秀幸医師は「医師が事前に電話で問診し、滞在時間を短くしている。また、訪問する医療従事者を最小限にし、回数も最小限に抑えている」と語る。「在宅医療を選んでいる患者は新型コロナに感染してしまったら、致命傷になる。ただ、医療依存度が高いため、定期的な診療は不可欠」と難しい判断に迫られている。

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