新型コロナウイルスの病院内での二次感染を防ぐため、スマートフォンなどのビデオ通話機能を用いたオンライン診療への関心が高まっている。
政府は規制改革推進会議を中心としてオンライン診療の規制緩和に向けた議論を進めてきたが、日本医師会や厚生労働省が規制緩和に慎重な姿勢を取り続け、なかなか緩和が進まなかった。だが、新型コロナ感染防止の機運が一段と高まり、4月7日に政府は、新型コロナの感染が収束するまでの時限措置として、これまで禁止されていた受診歴がない初診患者へのオンライン診療を正式に認め、4月13日から開始した。
これでオンライン診療が広く提供されるようになると見る向きもあるが、実態を詳しく見ると、普及を阻む壁はまだ厚い。
普及率1%のオンライン診療
ネックは低報酬と対象疾患制限
まず、現状としてオンライン診療を提供できる体制が整った医療機関がほとんどない。2018年3月に「オンライン診療に関する指針」が制定され、翌4月から保険適用されたことで、オンライン診療の普及が期待された。だが、オンライン診療料を算定するためには、オンライン診療を行う前に同一の医師により6カ月の間、毎月対面診療をしていることが条件として課され、対象疾患も生活習慣病等に限定されているなど、利用制限が厳しく設けられた。
その結果、保険適用から3カ月後の18年7月時点で、オンライン診療の施設基準の届け出があった医療機関は1000カ所程度(厚生労働省調査)にとどまり、全国の医療機関のたった1%に満たなかった。
さまざまな利用制限の中でも、オンライン診療が普及する上で大きなネックになっている原因の一つが、医療機関にとってインセンティブを感じにくい報酬体系だ。オンライン診療料は、対面診療を行った場合と比較すると診療報酬が半分程度に減る。
また、今年2月28日に厚労省は、すでに診断されている慢性疾患等がある定期受診患者らに対して保険適用を認めるなど、オンライン診療の対象疾患を拡大する特例措置を出したが、その報酬はオンライン診療料とは別の報酬体系である「電話等再診料」とされた。その報酬は、オンライン診療料よりもさらに低く、対面診療の2割程度にすぎない。
都内でオンライン診療を提供するあるクリニックの院長は、「オンライン診療は患者にとっては低価格で嬉しいかもしれないが、医療機関の経営的には厳しい」と話す。