2024年4月20日(土)

Wedge REPORT

2020年4月27日

 今年4月から適用となる診療報酬改定でも、オンライン診療料の算定要件の緩和が焦点の一つとなっていたが、蓋(ふた)を開けてみれば、オンライン診療の前に必要な同一医師との毎月の対面診療が6カ月から3カ月になったこと、対象疾患に慢性頭痛が追加されたこと程度であり、対象疾患の拡大はほとんど進まなかった。診療点数も特段上がったわけではない。

オンライン診療の方が
医療の質が上がる例もある

 対象疾患の制限について黒木氏は、「オンライン診療は、入院・外来・在宅につぐ4つ目の診療概念と捉えるべきであって、疾患によって制限するのではなく、それぞれの患者にとってどの診療形態が適切であるかを患者とのコミュニケーションの中で決定するのが自然ではないか。例えば、精神疾患はオンライン診療料の対象から外れているが、病院で直接対面診療するよりも家でリラックスした状態でオンライン診療をした方が自然な様子が見られる患者もいる」と指摘する。

 オンライン診療サービス大手のインテグリティ・ヘルスケア(東京都中央区)社長の園田愛氏は、「オンライン診療は便利で簡易なものというイメージだけが広がると、診療の形骸化など医療の質についての懸念が大きくなってしまう。多忙等による通院からの離脱を防ぎ治療継続を図るほか、日頃から症状を記録して医師に適切に伝えられるなど、あくまで医療の質向上や患者の医療参画の促進という視点を広く理解してもらいたい」と話す。

 先述の例のみならず、地方の医師不足への対応など、オンライン診療が有用性を発揮する場面は多くあるだろう。まして、今般の新型コロナウイルス感染拡大のような状況においてはなおさらだ。

 初診からのオンライン診療や、電話等再診料を算定できる対象疾患の拡大などの規制緩和は、あくまで新型コロナ感染拡大の状況下における時限的な特例措置である。

 今後、新型コロナと同等かそれ以上の脅威を与える〝疾病X〟が到来する事態に備え、遅きに失したオンライン診療のインフラ整備を進める議論をさらに急ぐべきではないだろうか。

Wedge5月号では、以下の特集を組んでいます。全国の書店や駅売店、アマゾンなどでお買い求めいただけます。
■新型コロナの教訓 次なる強敵「疾病X」に備える 
Part 1        「コロナ後」の世界秩序 加速するリベラルの後退
Part 2        生かされなかった教訓 危機対応の拙さは必然だった
Interview   「疾病X」に備えた日本版CDCの創設を急げ
Interview     外出禁止令は現行法では困難 最後の切り札は「公共の福祉」
Part 3        危機において試されるリーダーの「決断力」と「発信力」
Chronology  繰り返し人類を襲った感染症の歴史  
Column1     世界のリーダーはどう危機を発信したか?
Part 4         オンライン診療は普及するのか 遅きに失した規制緩和
Interview     圧倒的なアクセシビリティで新型コロナによる医療崩壊を防ぐ  
Column2     露呈したBCPの弱点 長期化リスクへの対策は?

  
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◆Wedge2020年5月号より


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