2024年7月16日(火)

Wedge REPORT

2020年4月27日

 オンライン診療の普及を妨げるもう一つの大きな問題として、オンライン診療料を適用できる対象疾患の制限が厳しいことがある。

 日本オンライン診療研究会が18年12月から19年1月にかけて行った調査では、過去3カ月以内にオンライン診療を実施した医療機関108のうち、オンライン診療料として算定した診療の割合がゼロという医療機関が6割にも上った。同研究会会長で、外房こどもクリニックでオンライン診療を行う黒木春郎氏は、「患者がオンライン診療料として算定できる疾患を抱えているケースはごくわずかで、電話等再診料で算定するか自由診療で行うケースがほとんどだ」という。

 先述した2月28日の厚労省特例措置でも、電話等再診料を適用できる対象疾患は拡大したが、オンライン診療料を適用できる対象疾患の制限は緩和されていない。では、なぜこの期に及んで現場の医療機関にとってオンライン診療を行いづらい措置が講じられるのか。それは、冒頭のように日本医師会や厚労省がオンライン診療の拡大に慎重な姿勢を取っているからだ。

規制緩和を阻む日本医師会
保険適用も改革とは逆行

 診療報酬改定の議論は中央社会保険医療協議会(中医協)で行われるが、日本医師会副会長の今村聡氏は常々、「オンライン診療を活用するに当たっては、対面診療と同等のエビデンスが出されているかどうかが重要。きちんとした効果検証のもと、こういう疾病であればこの診療方法が活用できるのではないかという議論になるべき」と主張している。

 オンライン診療の有用性についてエビデンスが必要というのは確かに一理あるが、「オンライン診療の拡大によって評判の良い医師等へ患者の需要が集まるようになると、地方の医療機関が患者から選ばれなくなり、経営が悪化する恐れがあることを、日本医師会は懸念しているのだろう」と多くの医療関係者は語る。

 18年4月にオンライン診療が保険適用された際も、規制緩和が進んだように見えるが、実態はその逆だ。東京医科歯科大学教授の川渕孝一氏は、「オンライン診療料が保険収載されたことによって、電話等再診の対象疾患が大幅に制限された。しかもオンライン診療料の算定条件が厳しいため、医療機関からすれば、オンライン診療料も電話等再診料も算定しづらくなっている。オンライン診療を普及させる方向とは逆に進んでいるのではないか」と指摘する。

(出所)ウェッジ作成
(注)図の面積の大きさは各保険診療の適用範囲のイメージ。2018年3月以前から電話等再診料を 算定している患者については、経過措置として同年4月以降も同再診料の算定が認められている。 写真を拡大

 実は2月28日のオンライン診療対象疾患を拡大する特例措置(報酬は電話等再診料)も、オンライン診療料の保険収載によって規制が強化されたのを、元に戻しただけのようにも見える。


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