模索される地域での横の連携
総合診療医・家庭医は、通常、医療の枠におさまらずに看護や介護といったサービス提供者たちと月1回ほどのペースで情報共有や研修を行っている。「患者に関する情報をいかに収集し、それを伝達して横の連携を強め、リーダーシップを発揮していくことも総合診療医・家庭医の研修プログラムに含まれている」と葛西氏は話す。
ただ、今回の新型コロナについては「変化の速度があまりにも早い」と指摘する。未知のウイルスの症状や感染様式といった情報や、緊急事態宣言の発令をはじめとする政策や社会情勢の変化は時々刻々と進んでしまっており、これまでの月1回といったペースではとても対応しきれない。
「インターネットなどの機器も駆使しながら、頻繁に情報共有をしていくことが必要とされる。テレビ会議や動画の配信なども通じて、ガウンやフェイスシールドの使い方などの技術伝達方法も工夫しなければならない」と話す。
物資不足に対しても、そうした医療機関や介護施設の連携によって解消への模索が進められている。「施設間によって物資の偏りが出ている」(岩間氏)からだ。感染拡大当初は、各施設がそれぞれ付き合いのある卸業者や医師会、行政といったところに発注やお願いをして医療物資を仕入れていた。そのため、仕入れの品や量が施設ごとに変わってしまっていた。また、訪問看護や介護施設といった業種や運営形態によって頻繁に使う物資が異なる。各施設の倉庫に置ける数も異なるため、ある診療所ではマスクがたくさん残っていたり、ある介護施設ではガウンが余っていたりする事態が起きてしまっていたのだ。
亀田ファミリークリニック館山がある南房総地域の医療圏では、有志で病院・診療所や看護、介護施設などが連携して、それぞれの物資状況や地域とつながりがある卸業者が持つ物品を週1回ほどの頻度で情報共有している。物資が足りない事業者があれば、余っている施設が譲ったり、卸業者を紹介したりする形だ。「近隣住民同士でしょう油を貸し合うような古き良き日本のイメージで支え合えたら」と岩間氏は説明する
「医療資源の分配を、政府や行政といった大きな枠組みでやってもらうのは、難しいし、すぐにはできない。まずは顔の見える施設同士が連携していくのが現実的な改善策」と語る。非常事態である今だからこそ、地域医療の神髄ともされる地域内での連携が求められている。
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