WEDGE REPORT

2020年4月30日

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高口康太 (たかぐち・こうた)

ジャーナリスト

1976年生まれ。千葉大学人文社会科学研究科(博士課程)単位取得退学。中国・南開大学に留学後、ジャーナリストとして活動。著書に『幸福な監視国家・中国』(共著、NHK出版)等多数。千葉大学客員准教授を兼務

 2月、湖北省武漢市で、オンラインでの慢性疾患の再診が医療保険の支給対象となった。新型肺炎の流行を受けて規制緩和が前倒しされた形だが、3月にはこの措置は全国に拡大された。従来、オンライン診察は医療保険が適用されなかったため軽微な疾患での利用が大半だったが、一気に利用が広がりそうだ。オンライン医療企業の微医(ウィドクター)によると、2月26日に武漢市で同社のサービスが認可されてからわずか10日あまりで、5万人にオンライン診察による処方せんが発行されたという。

微医を使ってオンラインで診察を行う医師たち (WE DOCTOR)

 3月26日には浙江大学医学院付属第一病院が、アリババグループと共同で「新型コロナウイルス感染症対策ハンドブック」を発表した。同ハンドブックには次の一節がある。「インターネット病院機能を提供し、緊急ではない慢性疾患などの医療需要を処理するように誘導して来院人数を減らし、受診時の交差感染リスクを下げる」。

 実際、中国では新型肺炎の流行を受け、平安好医生(Ping An Good Doctor)、微医などオンラインの医療プラットフォームの利用が急増した。平安好医生の1日あたりの新規ユーザー登録数は流行前の10倍に増加し、微医における過去50日間の医療相談サービスの利用は累計168万回に及んでいるという(3月末時点)。

 こうした企業の提供するサービスや独自のオンライン診察システムを用いて、浙江省では389の病院がオンラインの発熱外来を開設した。その結果、浙江省における病院の発熱外来を訪問する患者数は、最盛期の1日3万人から9000人強(2月8日のデータ)にまで減少したという。

 中国における、オンラインでの診察は2015年に辺境や農村を対象に解禁され、18年9月の「インターネット診療管理弁法(試行)」によって全国的に解禁された。インターネット病院の免許を取得した病院はチャットや通話などの手段で患者を診察し、薬を処方する権限を持つ。

どこにいても最高クラスの
医師の診察を受けられる

 なぜ、中国では僻地(へきち)や地方だけでなく都市部でもオンラインでの診察が利用されているのか。その背景にはそもそもの医療体制のゆがみがある。

 中国では規模に応じて、病院は無級から三級(三級が最上位)に区別されている。東方証券による医療IT産業に関する報告書(20年2月)によると、全体に占める三級病院数の比率は7.7%にとどまるが、治療している患者数で見ると三級病院が51.7%と過半数を占める。また三級病院の病床の利用率も97.5%とほぼ飽和状態にある(18年の統計)。つまり、中国では日本以上に患者が大病院に集中する傾向があり、新型肺炎が流行しなくとも大病院は医療崩壊一歩手前の状況だ。

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