プーチン大統領は、カリモフ大統領と会談。NATOが2014年末までのアフガニスタンからの撤退を決めたのを受けて、両国がアフガニスタンの治安悪化防止で協力することを約束した。
しかし、一番の目的は中国に対するけん制であると思われる。天然ガス供給などで、近年、中央アジア諸国と中国の関係が深まっており、中国が旧ソ連地域に対して影響力を拡大していることをロシアは快く思っていない。そこで、訪中前にウズベキスタンに訪問して、同国をつなぎとめると同時に、旧ソ連諸国との外交を重視する姿勢を強調したものと思われる。
つまり、対米関係においては、中国はパートナーといえるが、ロシア外交のプライオリティとしては中国の占める位置は決して高くなく、旧ソ連諸国や欧州のほうが重視されていることが明らかになったといえよう。
中露首脳会談の成果
こうして、6月5日にプーチン氏はやっと中国に到着する。国賓としての訪問となり、胡錦濤国家主席(5日)や次期国家主席への就任が確実な習近平国家副主席(6日)とも会談を行った。上述のように、中国に対する脅威の気持ちは強い一方、氏は中国を米国と対抗していくうえでのパートナーと考えている。加えてプーチン新政権の基軸の一つである極東・東シベリア開発でも重要なパートナーとなると考えており、経済協力関係を深化させたいところだ。
実際、首脳会談では、首脳会談では2国間の経済協力の拡大のほか、国際情勢に関して議論がなされた。両首脳は幅広い分野で戦略的協力関係を深めることで合意し、共同声明に署名した。共同記者会見でプーチン氏は、シリアなど中東や朝鮮半島情勢、イラン核問題などで「われわれの立場は近い」と述べ、中露が欧米のシリア介入や制裁に反対する立場を示した。一方、胡主席は、双方がエネルギーや投資拡大などで合意し、両国間の貿易額を2020年までに2000億ドルとする目標を掲げたとしたうえで、「軍事協力関係を一層高いレベルにすることで合意した」と述べた。
両首脳は経済、社会、文化など多分野で12の文書に署名し、長距離用の大型航空機やヘリコプターの共同開発などで協力を進めることや、ロシアから中国への送電や石油などの安定供給などエネルギー協力でも合意した。しかし、懸案の天然ガスの価格交渉(拙稿「中露蜜月に水を差す天然ガス問題」参照)には、当初関係筋が予測していたように、やはり進展はなかった。
反米色の強まったSCOサミット
このように、中露関係の背後に、「アジア回帰」を宣言した米国に対する両国の警戒心と協力の意図があることは明白だが、中露は6~7日の創設11周年を迎えたSCOサミットの場でも、両国の連帯と原則的立場を国際社会に明示した。
同サミットには、正規加盟国に加え、イラン、パキスタン、インド、モンゴルの首脳がオブザーバーとして、ベラルーシとスリランカの代表は対話パートナーとして、そしてアフガニスタンはゲストとして参加した。イランのアハマディネジャド大統領はサミットとは別に胡主席とも会談するなど、反米色がさらに強調されることとなった。