Wedge REPORT

2020年5月25日

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球児たちの進路は

 この3年生投手が所属する野球部の指導者は、来春高卒予定となっている球児たちの進路について次のように分析している。

 「ウチの生徒だけではないですよ。おそらく今秋、プロ志望届を出す3年生は例年に比べるとかなり少なくなるはずです。全国大会がないことから高い評価を得ている選手も限りがある。大学へ進学するか、あるいは社会人チームで野球人生を継続させていく。ドラフト候補と目されていた高校3年生の球児たちの多くが、何かとリスクの高そうなプロ入りを回避し、進学か就職という手堅い人生設計を選ぶのではないかとみられています。

 その理由はやはり、この未曽有のコロナショックです。球児たちは実際にセンバツ、夏の甲子園と過去例のない春夏連続の全国大会中止という出来事に直面した。この先も何が起こるか分からない世の中ならば、入れるかどうかすら分からない上に生存競争も難儀なプロの世界へ進もうとするより〝安パイ〟な道のりを進みたいと考えるのは、賢明と言えます」

 とはいえ、評価ランクはそれほど高くなくてもプロから視線を向けられるようなレベルの球児ならば大学や社会人から推薦の〝オファー〟がかかる可能性が高く、だいぶ恵まれているといえるだろう。今年の3年生たちは新型コロナウイルスの影響によって春夏の甲子園が中止に追い込まれたばかりか、一部の私立有力校を除けば部活動停止によって満足な練習すらできていない。実戦の場もほとんどないことから進学や就職の道を選ぶ場合、推薦に必要な材料も少なく、自分の力で切り開いていくしかないのが現状のようだ。

 前出の指導者も現場のリアルな現状を打ち明けながら、このように危惧している。

 「コロナの影響を受けているのは当たり前の話ですが、我々の携わる高校野球だけではありません。インターハイも中止になった。このように高校スポーツ界における判断材料が今年は軒並み消滅していることを踏まえれば、各大学が来春入学予定者の選考においてスポーツ枠での推薦を減らしたり、より厳格化したりしようと検討しているのも無理はないと思います。

 でもそうなれば、もちろん球児たちだってとばっちりを受けてしまう。例年よりもはるかに厳しくなるわけだから大半が志望校のランクを下げたり、それでも推薦枠すら得られないようなレベルの子は一般入試から正面切って門を叩くしかない。そう考えると大学も社会人への就職も決まらず、あぶれてしまう3年生球児はこれまで以上に数多く出てしまうのではないでしょうか。

 ちなみにウチの部の中には今の段階から進路が難航しそうなことに不安を覚えている選手も何人かいます。『少なくとも野球は続けられないかもしれません』と弱音を吐く子もいて叱咤激励を飛ばしてはいますが、内心では同情しているのが正直なところです」

 コロナショックの残した〝爪跡〟は春夏の甲子園中止だけではなく、高校球児たちの進路にまで深刻な悪影響を及ぼそうとしている。

  
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