2024年4月25日(木)

VALUE MAKER

2020年12月29日

学校を「村起こし」につなげる

 ラオスに通い詰めていた谷川さんはあることに気づく。当初は現地で活動していた米系の慈善団体と組んでプロジェクトを進めていたが、どうも現地の人たちのニーズとズレている。学校だけ造ればそれでいいという感じで、学校が地域の拠点として「村起こし」につながっていない、と感じたのだ。やはり現地の人たち自身にNGO(非政府組織)を作ってもらい、そこと連携する必要がある。

 そんなとき米系のNGO団体で働いていたノンさんに目を付けた。ノンさんは、医科大学を出て首都ビエンチャンの病院勤務が決まっていたのを断り、米系NGO団体に飛び込んだ。地域の貧困を救うには、まずは教育だと考え、学校建設プロジェクトにのめり込んでいたという。実はノンさんは地域の恵まれない子ども7人を養子として育ててきた。

 谷川さんはそんなノンさんの熱い想いに打たれ、独立を促した。谷川さんが設立を側面支援したノンさんのNGO「ACD」はラオス政府が公式に認定した登録NGOの最初の5つのうちの1つになった。

 「その地域でプロジェクトが成功するかどうかは、パートナーの現地NGO次第なんです。ラオスではノンさんたちが本当によくやってくれています」と谷川さんは言う。

これまで谷川さんが設立した学校は300を超す(写真=湯澤 毅)

 谷川さんは19年までの15年間で独自に11億8900万円を集め、ラオスやベトナム、タイ、スリランカなどに合計188の学校を建設し、日本財団の助成金も含めると304の学校を建設した。

 なぜ、そんなに巨額のお金を集めることができたのか。

 資金提供者に、それぞれの学校建設プロジェクトに深くコミットしてもらうやり方が共感を呼んでいるからだ。AEFAにお金を寄付しておしまい、ではないのだ。

 どの学校建設に協力するか、資金はひとりで出すか、複数で共同で出すか。まさにオーダーメイドのプロジェクト型寄付なのだ。実際に、学校が完成すると現地で「開校式」が行われ、資金提供者はそれに参加することができる。希望があれば、事前に建設候補地を視察し、案件を選ぶこともできる。完成した学校には「ファウンダー(創設者)」として名前が刻まれ、現地の子どもたちとの交流も生まれる。

 19年の春にラオスの山奥の学校で「開校式」が行われた。そこには89歳になる日本人の老婦人が車椅子で参列していた。子どもがいないので貯金の一部をAEFAに寄付したいという話が始まりだった。決してお金持ちとはいえない一般の女性だ。

 当初は高齢なので現地に行くのは無理だと諦めていた。だが、プロジェクトが進む報告を受けているうちに、現地に行きたくなった、という。子どもたち全員に手縫いの小袋を作り持っていった。式に出て「ラオスにこんなにたくさん子どもができた」と泣いた。

谷川さんと、寄付者の到着を待つラオスの子ども(筆者撮影)

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