2024年11月22日(金)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2020年9月12日

はじめは何とかなったのだが…

 日本から寿司職人を呼んで、数年は何とか欧州系の客層相手にレストランビジネスはうまくいくと思われた。つまり欧州の出稼ぎ労働者や資源開発ブームも手伝って和食を好む客層が結構いたことと、時々やってくる日本人旅行者等を相手にしながら成功を収めたかに見えたが残念ながら長続きをすると言う事はなかったのである。

KISEKIレストラン

 そんな国内景気の落ち込みから山田一家のKISEKIレストランの収支も年を追うごとに厳しくなっていった。まず欧米人の投資が細ってきたために上客であったお客さんの足が遠のいたのである。ルワンダ人相手に日本食を広げるにはルワンダ人の購買力平価が10倍くらいまで改善しなければならなかった。

 日本レストランを成功させるには簡単ではなかった。つまり日本食の需要が少ないうえに日本料理の材料を確保することが大変であるばかりかどうしても現地のアフリカ人を相手に飲食店のビジネスを成功させるには文化とコストの壁があったからである。しかし、ルワンダの人件費は大変安価で、現地のシングルマザーを雇用しながら利益は、しばくは考えずに景気が戻ってくることを期待しながら時期を待ったのである。これを実行するために簡単な張り紙をしたところ3人の雇用に何と300名の希望者が集まってきた。その中で優秀なシングルマザーを雇用したのだが、彼女らに日本的なおもてなし教育を浸透させるのは簡単ではなかった。

 あまりにも両国の文化ギャップがあるためにうまくいかないのが当初の問題であった。それでも工夫をして人海戦術で何とかなったが、やはり本格的な日本レストランの経営には障壁が高すぎたのである。

 そんな時期に新型コロナ禍がアフリカにも押し寄せたのである。2020年になって世界中に猛威を振ったコロナ騒ぎはアフリカに飛び火するのは時間の問題であった。案の定2月ごろからルワンダにもコロナ被害が発生し始めた。新型コロナウイルスの感染拡大を受けアフリカで最初にロックダウン(都市封鎖)に踏み切ったのはルワンダであった。

 4月にはアフリカでもコロナ患者が大変早いスピードで広がったために都市封鎖に踏み切るのも当然の措置であった。8月末時点、アフリカ全土で累積感染者数は124万人、百万人当たり971人、ルワンダは感染者数が累計8343人 回復者が累計1904人 死亡者数が累計16人、とアフリカ54カ国中で28位であった。

 アフリカの中では病院や衛生思想は中位にあるルワンダの防免体制はやはり盤石というわけにはいかない。

シングルマザーたちの屈託のない笑いと歌と踊り

ルワンダを訪問した筆者

 残念ながら日本レストランは休業せざるを得なかった。しかし雇用していたシングルマザーたちの生活を何とかしなければならなかった。

 彼女達は仕事をなくすことになるが、その代替となる仕事先は皆無であった。

 ルワンダでは当然コロナ対策のためにレストランをはじめほぼすべての商店街は閉鎖された。当然山田美緒さんのKISEKIレストランも閉鎖であるためにシングルマザーたちは生活の基盤を失ってしまったのである。

 2020年3月になってただでさえお客さんが来ない状態が続いていたがコロナ禍のためにロックダウンとなり、手の打ちようがなくなってしまった。

 3人の子供たちが小学校に入る時期になり、一層のこと日本に戻ることを真剣に夫婦で話し合った。今ならコロナと5年間の挑戦が勇気ある撤退の言い訳になるとどちらからともなく言い出した。

 さて山田一家はこの未曽有の窮地を超えることができるのだろうか?

「ママと子供たちを二度と路上に戻さない」と覚悟を決めた

 そんな状態のときに山田美緒さんに勇気と一筋の光を与えてくれたのがシングルマザーたちの屈託のない笑いと歌と踊りであった。

 これまで自分たちがルワンダの人々にボランティアをしてあげているという意識が急速に消えていくような感覚になった。

 その時、急に「ママと子供たちを二度と路上に戻さない」と覚悟を決めて、絶対に諦めないと誓った。子供3人の全責任を持ちながら社員を守り抜く。

 全貌が見えないコロナ騒動の中で、日本へ帰国する人たちを見送った最後の国際線が飛んだ夜。

 「絶対給料は減らさないし誰も解雇しないから」と涙をこらえてルワンダ人マネジャーに伝えた空っぽのレストラン。

 この続きはパート2に書かせて頂きたいがルワンダを更に深く理解してもらうために以下のコラムも参考にして頂きたい。

アフリカのシンガポール・ルワンダ紛争鉱物の背後にあるアメリカの狙い

世界各国の「為さざる罪」ルワンダ・ジェノサイド

  
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