2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年7月27日

 しかしそうでなければ、ドゴールの影から出て、メルケル独首相が求める統合に飛び込むことになる。フランスにとっては、表が出ればドイツが勝ち、裏が出ればフランスが負けるという苦渋の選択を迫られているようである、と述べています。

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 ユーロ危機の根源や解決策を探る際、金融経済の仕組みや組織の欠陥に焦点が当たりますが、見逃してはならないのが、加盟国の歴史や国民性です。この論説は、それを指摘していて、的を射ています。

 3度ドイツに、それも屈辱的に負けたフランスにとって、傷ついた国家のプライドをいかに取り戻すかが第二次世界大戦後の重大テーマであり、ドゴールは虚勢をはってでもフランス人の国家への愛国心をあおりました。一方、ドイツにとっては、周辺諸国に受け入れられるためには、NATOや統合欧州の一部となり、表向きドイツ色を消すことが重要でした。そもそも抱いていた欧州統合の在り方が違っていました。

 オランド仏新大統領は、反緊縮政策を掲げ大統領選に勝利し、議会選挙もその勢いで社会党が圧勝しました。しかし、経済刺激策のために歳出を増やせば、ますます負債は増え、調達コストも上がります。オランド大統領は、選挙公約通り、サルコジ前大統領が62歳にまで引きあげた定年を、またもとの60歳に戻しています。

 ドイツからみれば、ギリシャやスペインばかりでなくフランスも含め、返済の見込みが薄くなる国々の財政政策に影響を及ぼせないままに、負債の保証人となりATMとなることを、求められていることになります。ドイツとしては、政治統合や管理監督の仕組みを求めるわけですが、深化がすすめば主権は奪われて行くことになります。また、統合が深化する欧州は、フランス色ではなく、よりドイツ色が強くなって行くでしょう。スティーブンス氏が述べているように、フランスは苦渋の選択を迫られ、その選択によってユーロの将来ばかりか、欧州統合の在り方も左右されることになります。

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